研究課題/領域番号 |
24500520
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
磯貝 香 常葉大学, 保健医療学部, 教授 (00549496)
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研究分担者 |
山田 陽滋 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90166744)
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キーワード | 筋筋膜性疼痛 / 徒手的理学療法 / 筋硬結 / 触診 / 触察分布力ベクトル |
研究概要 |
本研究では、触診技術の発展を目的に、検査者が筋内に存在する異常部位(筋硬結)を触診するときの皮膚に加えられる分布力ベクトルを検出し、その検出結果をリアルタイムに可視化するシステム(触診技術向上支援システム)の構築を目指している。このシステムは、筋硬結を内包する皮膚・皮下組織・筋を人工的に再現した構造物(筋硬結ダミー)、分布力ベクトルを検出するセンサ、検出結果を映し出すディスプレイの3部をもって実現させる計画である。 上記システムの一部を担う筋硬結ダミーには、ヒトの皮膚・皮下組織及び筋の物理特性を与える必要があるが、皮膚・皮下組織と筋の物理特性を別々に計測した先行研究は少なく、自ら計測する必要性に迫られることとなった。そこで、超音波断層撮影装置と引張圧縮試験機を組み合わせ、圧迫力と皮膚・皮下組織及び筋の変形との関係から、それぞれの弾性特性を調べる実験を行ってきた。 一方、筋硬結ダミーに内包させる人工筋硬結の物理特性の妥当性を見出すために、理学療法士、作業療法士、柔道整復師、鍼師等を対象に、標準的な筋硬結の形や性状に関するアンケート調査を行ってきた。アンケート用紙の修正及び調査のやり直しを繰り返す中で、標準的な筋硬結の形、大きさ、硬さ、深さ等の分析が進んできている。 ヒトの皮膚・皮下組織及び筋の物理特性及び標準的な筋硬結の物理特性の2点について、第49回日本理学療法学術大会での発表の採択を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
筋硬結ダミーの製作に必要な、ヒトの皮膚・皮下組織及び筋の物理特性の計測に手間取ってきた。すでに一定の結果を得ているが、未だ皮膚・皮下組織及び筋を圧迫する方向、被験者の姿勢の安定性等に関する問題点を含んでいる。 人工筋硬結の物理特性に関するアンケート調査を行ってきたが、アンケート内容の不備により十分な分析が行えなかった。そこで、すべてのアンケート結果を破棄し、アンケート用紙の修正及びアンケート調査のやり直しが必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトの皮膚・皮下組織及び筋の物理特性の計測方法を改善し、すでに実験が開始されている。今後、この結果を分析し、その結果と筋硬結の物理特性に関するアンケートの結果を参考にして、数種の筋硬結ダミーを試作する。続いて、試作した筋硬結ダミーを、日常的に徒手的理学療法に従事している者に触察させ、最も人体に類似しているものを選択させる心理物理学実験を行うとともに、意見聴取を行うことで、より人体に近い筋硬結ダミーへと改良していく。十分に満足のいく筋硬結ダミーが完成した後、これにビーズを埋め込んだ触察分布力ベクトルセンサの製作に入る。同時に、これをCCDカメラで撮影し、その結果を解析するプログラムを開発し、その結果をリアルタイムにディスプレイに映し出すシステム(触診技術向上支援システム)を構築する。 続いて、徒手的理学療法の熟練者を被験者として募り、触診技術向上支援システムを用いて熟練者同士が触察感を共有する練習を行い、触察感共有後の上達度の定量評価を行う。そして、上達後の触察分布力ベクトルデータを熟練者のデータとして保存する。続いて、徒手的理学療法の非熟練者を被験者として募り、その触察分布力ベクトルデータを収集保存し、これを非熟練者の触察分布力ベクトルデータとして保存する。このデータベースから両者の違いを統計学的に分析できるようにする。そして、評価結果をもとにして、熟練者が非熟練者を指導することによって、非熟練者の触診技術が向上するかどうかを調べる介入実験を行う。また、同評価結果をもとに非熟練者が単独で練習することで、触診技術が向上するかどうかを確認する。これにより、触診技術教育の自動化が可能となるかどうかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトの皮膚・皮下組織及び筋の物理特性の計測及び人工筋硬結の物理特性に関するアンケート調査のやり直しを強いられ、当該年度の計画を進めるに至らなかった。 人工筋硬結の物理特性に関するアンケート調査はすでに終了し、ヒトの皮膚・皮下組織及び筋の物理特性の計測も進行中である。よって、次年度は当該年度の計画に則り、次年度使用額を使用していく。具体的には、シリコーン等の材料費として約80千円、また触診技術向上支援システムのハード(画像処理用コンピュータ、メモリ16GB、グラフィックスボード:NVIDIA GeForce GTX780 、IEEE1394カメラ)費用として約600千円、またソフト(Microsoft製、Visual Studio Professional 2013)費用として約70千円を使用する計画である。また被験者(延べ25人×4時間)謝金として100千円、成果発表(日本理学療法学術大会、神奈川3日×2人)旅費として約80千円、計930千円を使用する計画である。
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