研究課題/領域番号 |
24500521
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 組織工学 / 培養骨格筋 / 電気刺激 / スキャフォールド / コラーゲン |
研究概要 |
本研究は、これまでに得た、コラーゲンゲルに包埋した樹立筋芽細胞の伸張培養によって作製した三次元培養骨格筋を、工学的に応用することを目的としている。特に、福祉ロボットやマイクロマシンなどへ応用することを最終目標としており、現在得られている長さ約15mm、直径約0.5mmの培養骨格筋を、ソフトアクチュエータとして利用するための研究開発を行っている。具体的には、3つの課題において改良ならびに検討を行う。すなわち、1.培養骨格筋の長大化、2.屈筋-伸筋構造による屈伸運動機構の導入、3.1ヶ月間の駆動期間を目標とした体外培養機構の開発、である。 初年度は、主として課題1について検討した。基材(スキャフォールド)としてコラーゲンゲルから血管様構造を有するコラーゲンスポンジへ変更し、その効果を検討した。可溶化コラーゲン溶液を発泡後架橋することで血管様構造を有する多孔質スポンジを作製し、循環培養型の自作バイオリアクターを用いて樹立筋芽細胞を播種・培養することによって、大型化できる可能性が示唆された。より強力な培養骨格筋を得るため、樹立細胞初代細胞の利用についても検討を行っているが、まだ有効な成果は得られていない。また、筋芽細胞の成熟を促進するために、電気刺激培養も導入した。リアルタイムPCR装置にてMyoD等のマーカ遺伝子の発現を指標として細胞分化効率を調べたところ、電気刺激培養によって成熟が促進されることを見出し、論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、課題1について主として検討した。 まず、コラーゲンスポンジの開発については、メタノールを含有させたコラーゲンゲル溶液を傾斜凍結することによって血管構造を有する長さ4cmのスポンジを作製し、自作の循環培養型バイオリアクターで筋芽細胞を播種した。その結果、コラーゲンスポンジの内部に細胞の浸潤が確認することができたが、輪郭部まで均一に播種できておらず、さらなる改良が必要と思われた。しかし、大型化の可能性は示唆されたと考えている。 次に、コラーゲンゲル型三次元培養骨格筋の作製条件至適化ならびに成熟促進については、細胞濃度、培養期間が等尺性収縮力に及ぼす至適条件について検討した結果、1.0×107cells/mlの細胞濃度が最も強い収縮力を示すことを見出した。そして、電気刺激を加えた結果、電圧1~5V、周波数0.5Hz、パルス幅2msの矩形波を、継続的に与え続ける事が最も収縮力を強くする条件であることを見出した。ここでは遺伝子Myf-6の発現量が増加していた。これらは、学術的な成果としては、世界で初めての報告であり、現在、論文執筆中である。 以上のことから、今年度の達成度はおおむね順調であると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、課題1について初年度に引き続き検討するほか、課題2についても検討を進める。 課題1については、コラーゲンスポンジの改良を引き続き行い、培養骨格筋の長大化を進める。同時に、電気刺激培養や繰り返し伸展刺激、温熱刺激、薬物刺激などを行い、成熟の促進ならびに高度化を進める予定である。初年度に開始した電気刺激培養については、自作の電気刺激装置を培養プレートに導入し、刺激時間や間隔、周波数などについて、効率的な電気刺激条件を見出すことを主眼とする。同時に、培養温度を変化させることで、温熱刺激の影響についても深く検討していきたい。 課題2については、これまでに作成した培養骨格筋組織を組み込んだマイクロデバイスの改良を行う。生体骨格筋でも自ら弛緩して伸びることはなく、収縮すると関節が曲がる屈筋と、収縮すると関節が伸びる伸筋とが拮抗的に働くことで、関節が曲げ伸ばしされる。したがって、培養筋2本を互い違いに駆動することで、効果的なアクチュエータ駆動を行うことができる。これまでに、培養骨格筋1本とゴム弾性体1本とを組み合わせたアクチュエータについて検討を行ったが、電気パルス刺激の周波数に呼応した振幅運動を得たものの、大きな運動量を得ることはできなかった。そこで、ゴム弾性体に代わり、培養骨格筋2本を組み込み、かつ各筋を個別に駆動し得る電気刺激システムを構築する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
備品については、スポンジ作製・バイオリアクター作製のための各種装置や光造形マイクロ加工装置、細胞培養関連機器類、動物実験施設などは既に現有している。現有していない計測機器等についても、極力、所属施設内供用設備などの使用を予定している。 消耗品については、スポンジ作製やバイオリアクター作製、および細胞培養に関する試薬や器具類を主として購入する。 その他、脱細胞化組織(人工腱)の改良などに関する意見交換・打合せ旅費、研究成果発表のための国内外旅費、細胞培養実験補助者に対する謝金、および研究成果投稿のための費用を予定している。
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