研究課題/領域番号 |
24500521
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
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キーワード | 組織工学 / 培養骨格筋 / 電気刺激 / スキャフォールド / コラーゲン / ケラチン |
研究概要 |
本研究は、これまでに得た、コラーゲンゲルに包埋した樹立筋芽細胞の伸張培養によって作製した三次元培養骨格筋を、工学的に応用することを目的としている。特に、福祉ロボットやマイクロマシンなどへ応用することを最終目標としており、現在得られている長さ約15mm、直径約0.5mmの培養骨格筋を、ソフトアクチュエータとして利用するための研究開発を行っている。具体的には、3つの課題において改良ならびに検討を行っている。すなわち、1.培養骨格筋の長大化、2.屈筋-伸筋構造による屈伸運動機構の導入、3.1ヶ月間の駆動期間を目標とした体外培養機構の開発、である。 本年度は、主として課題1および3について検討した。昨年度より引き続いて基材(スキャフォールド)としてコラーゲンゲルから血管様構造を有するコラーゲンスポンジについて検討した。可溶化コラーゲン溶液を発泡後架橋することで血管様構造を有する多孔質スポンジを作製し、循環培養型の自作バイオリアクターを用いて樹立筋芽細胞を播種・培養することによって大型化できたが、大きな収縮力を得るには至っていない。そこで、細胞組み込み後の分解を狙って、新たにケラチンタンパクの利用について検討した。一方、強力な培養骨格筋を得るため、培養時の電気刺激も導入し、そのための装置も製作した。現在、長期電気刺激の影響について、MyoD等のマーカ遺伝子の発現を指標として検討しており、電気刺激培養によって成熟が促進されることを見出し、論文を作製した(投稿準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、課題1および3について主として検討した。 まず、コラーゲンスポンジの開発については、メタノールを含有させたコラーゲンゲル溶液を傾斜凍結することによって血管構造を有する長さ4cmのスポンジを作製し、自作の循環培養型バイオリアクターで筋芽細胞を播種した。その結果、コラーゲンスポンジの内部に細胞の浸潤が確認することができた。ラット背部皮下に埋入したところ、収縮機能を維持していることが確認された。今後、より大型の組織を作製するため、動物体内での埋入についても検討して行きたい。また、ケラチンについては、羊毛からアルカリ抽出にて得られたケラトースのゲル化について検討し、比較的早期に分解されるゲルを作製できたため、細胞の組み込みについて検討する予定である。 電気刺激については、連続した刺激によって温度上昇やpHの不均一化をもたらす悪影響があったため、新たな電気刺激装置を開発した。これにより、より長期間の電気刺激を加えることが可能となった。その結果、昨年と同様に、電圧1~5V、周波数0.5Hz、パルス幅2msの矩形波を、継続的に与え続ける事が最も収縮力を強くする条件であることを見出した。薬物刺激についても、ビタミンCを添加することによって、収縮力の増大を認めた。現在、特許出願ならびに論文投稿準備中である。 以上のことから、今年度の達成度は順調であると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの課題1・3を引き続き検討するほか、課題2についても検討を進める。 課題1については、コラーゲンスポンジおよびケラチンゲルの改良を引き続き行い、培養骨格筋の長大化を進める。同時に、電気刺激培養や繰り返し伸展刺激、温熱刺激、薬物刺激などを行い、成熟の促進ならびに高度化を進める予定である。 課題3については、すでに循環培養装置を改良した新たな装置が完成しており、長期間培養の可否について詳細に検討する。 課題2については、これまでに作成した培養骨格筋組織を組み込んだマイクロデバイスの改良を行う。生体骨格筋でも自ら弛緩して伸びることはなく、収縮すると関節が曲がる屈筋と、収縮すると関節が伸びる伸筋とが拮抗的に働くことで、関節が曲げ伸ばしされる。したがって、培養筋2本を互い違いに駆動することで、効果的なアクチュエータ駆動を行うことができる。これまでに、培養骨格筋1本とゴム弾性体1本とを組み合わせたアクチュエータについて検討を行ったが、電気パルス刺激の周波数に呼応した振幅運動を得たものの、大きな運動量を得ることはできなかった。そこで、ゴム弾性体に代わり、培養骨格筋2本を組み込み、かつ各筋を個別に駆動し得る電気刺激システムを構築する計画である。
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