研究課題/領域番号 |
24500526
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三好 浩稔 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70292547)
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研究分担者 |
大川 敬子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (30251052)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 造血幹細胞 / ストローマ細胞 / 胎仔肝臓細胞 / 固定 / 凍結保存 / 分化・増殖 / 三次元培養 / ティッシュ・エンジニアリング |
研究概要 |
造血幹細胞移植やバイオ人工臓器の開発に応用できる基盤技術を構築することを目的として、三次元固定処理したフィーダー細胞を用いる未分化細胞の三次元培養法について検討した。フィーダー細胞に新たなストローマ細胞株を用いることで、ストローマ細胞株の違いが未分化細胞の増幅に及ぼす影響について検討した。 実験では、未分化細胞源としてマウス胎仔肝臓細胞を、またストローマ細胞株として本年度は C3H マウス 10T1/2 細胞を用いた。ストローマ細胞をスポンジ状の三次元培養担体に播種して培養したのち、細胞を担体ごとグルタールアルデヒドで固定処理した(三次元固定処理)。細胞を含んだ担体を洗浄し、この担体にマウス胎仔肝臓細胞を播種して2週間培養することで、胎仔肝臓細胞に含まれる造血系細胞を増幅した。コントロール実験では、三次元固定処理の代わりに、良好な結果が得られることが確かめられている三次元凍結保存処理を用いた。 三次元固定処理した 10T1/2 細胞を用いた結果、未分化な造血系細胞である造血前駆細胞(c-kit 陽性細胞)と造血前駆・幹細胞(CD34 陽性細胞)は、それぞれ 9.5 倍と 13 倍に増幅された。これらの値は、これまで用いてきたストローマ細胞株(DAS 104-8B)による増幅率と比較して、2倍程度高い値であった。また、コントロール実験と比べても約 1.5 倍の値が得られたことから、三次元固定処理した 10T1/2 細胞は造血系細胞の増幅を十分に支持することがわかった。なお、別のストローマ細胞として OP9 細胞株を用いた予備実験を開始したところ、10T1/2 細胞とほぼ同等の結果がこれまでに得られている。 以上の結果から、未分化な造血系細胞の増幅率はストローマ細胞の種類によって異なるとともに、10T1/2 細胞は増幅に適したストローマ細胞であることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新たなストローマ細胞を用いて造血系細胞の増幅実験を行い、従来用いてきたストローマ細胞と性能を比較することを目標とした。培養実験数は当初の予定より少なかったものの、良好な実験結果が得られたことから目標はほぼ達成しており、予定通り研究を遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに用いてきたストローマ細胞株(DAS 104-8B、10T1/2、OP9)について、造血系細胞の増幅に及ぼす効果を比較する。3種類の細胞の中で、増幅率と操作性の面から造血系細胞の増幅に適したものを選定する。良好な結果が得られたストローマ細胞株を用いて、ヒト臍帯血由来の造血幹細胞を増幅する実験を行う。また、本培養系において、造血系細胞の播種密度がその増幅率に及ぼす影響についても併せて検討する。 以上の実験に加えて、三次元固定処理フィーダー細胞を用いたマウス胎仔肝細胞の培養実験を開始し、肝機能の発現を調べる。この実験でも、造血幹細胞の増幅に用いたストローマ細胞を使用する。 以上の結果を比較検討することで、三次元固定処理フィーダー細胞を用いた本培養法が、未分化細胞の汎用的な培養法になる可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の多くは、消耗品(実験用動物(妊娠マウス)、培養関連器具、培養および解析関連試薬(培地、血清、抗体など))の購入に充てられる(約 1,100 千円)。ヒト臍帯血を用いた実験を開始することができれば、その購入費にも充てる。その他は、学会の参加費と旅費として使用する(約 100 千円)。 本年度に残額が生じた主な理由は、実験を担当した学生(4年生)が休学したため、培養実験数が予定よりも減ったためである。
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