研究課題/領域番号 |
24500527
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
水野 大 武蔵野大学, 薬学研究所, 講師 (70380061)
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キーワード | 生体機能材料 / 肺サーファクタント / 抗原デリバリー |
研究概要 |
本年度は、経鼻インフルエンザ接種マウスの免疫局所にあたる鼻咽腔 (NP) および鼻咽頭関連リンパ組織 (NALT) におけるサイトカイン分泌細胞の誘導を評価することにより、ヘルパー1T (Th1) 細胞活性化の検討を行った。SSFを用いた経鼻ワクチン接種を行ったマウスNP、NALTより採取されたリンパ球において、Th1タイプのサイトカインであるIFN-γを分泌するT細胞が誘導されており、Th1細胞の活性化がサイトカインレベルにおいても示された。 また、SSFによる抗原取り込み作用についてさらに詳しい解析を行った。蛍光標識したオボアルブミン (OVA) の、マウス骨髄から調製した樹状細胞への取り込みは、SSFにより増強された。個の取り込み増強はアミロライド誘導体により抑制された一方で、サイトカラシンDによってはほとんど阻害されなかった。SSFには、主にマクロピノサイトーシスによる細胞への取り込みを増強する作用があることが明らかとなった。 SSFの構成成分を改変することにより、さらに有効なドラッグデリバリー担体の開発を試みた。SSFの構成成分の内、ホスファチジルグリセロール (PG) をホスファチジルセリン (PS) に改変した素材を作成した。PSはアポトーシスを起こした細胞表面に露出し、マクロファージへの貪食作用を増強させる。PSを用いたSSFはPGを用いた従来品と同等に樹状細胞へのOVA取り込みを増進させた。PSを用いたSSFによる取り込みも従来品と同様、アミロライド誘導体による阻害を受け、マクロピノサイトーシスによる細胞への取り込みを増強する作用があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SSFにより増強される抗原取り込み経路を確定させ、サイトカインレベルにおいてもヘルパー1T細胞誘導性が確かめられたことで、SSFによる免疫誘導メカニズムの解析が進んだ。また、ホスファチジルセリンを材料としたSSFの作成に成功したことにより、より有用なドラッグデリバリー作成を行える素材開発の可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も継続して、OVAをツールとして用い、細胞性免疫誘導のメカニズムの解析を進める。マウスおよびその骨髄から調製した樹状細胞の他に、RAW264のようなマクロファージ由来の培養細胞株を用い、研究の加速を狙う。 また、本施設は、液体クロマトグラフィー法と質量分析分析法を組み合わせたタンパク質の網羅的解析(FD-LC-MS/MS:Imai K et al. (2011) Biomed Chromatogr 25: 59-64)を行う施設が充実している。これらを用い、SSFにより細胞性免疫誘導を行った細胞における因子の変動を網羅的に解析し、より詳細な免疫誘導メカニズムの解析も行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度より所属研究機関が変更となり、それに従っての実験計画の見直し等を行った結果、モデル実験動物(マウス)など消耗品の使用数が予定より少なくなったことなどによる。 培養培地や、ウシ胎児血清など平成26年度年度に実施する培養細胞系を用いた試験に必要な物品を購入するために使用する予定である。
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