本年度は、SSFを用いた経鼻ワクチン投与による細胞性免疫の誘導について検討を行った。SFF混合ワクチン経鼻投与マウスよりリンパ球を調整し、サイトカイン分泌を検討したところ、マウス鼻腔粘膜固有層 (NP) にIFN-γ産生リンパ球が誘導されることが明らかとなった。この結果により、SFF混合経鼻投与によって細胞性免疫が誘導される可能性が示唆された。そこで、細胞性免疫のエフェクター細胞である細胞障害性T細胞 (CTL) が、SF-10混合経鼻投与によって誘導されるか検討した。 抗原にはオボアルブミン (OVA) を用い、これをマウスにSSFとともに投与し、7日後に鼻咽頭関連リンパ組織 (NALT)、NP、および 頸部リンパ節 (CLN) からリンパ球を採取した。採取されたリンパ球に含まれる抗原特異的CTLを、T-Select MHC tetramer (MBL) により定量した。 OVAのみを経鼻投与したマウスでは、いずれの組織においてもCD8(+)細胞の誘導は認められなかった。OVA+SSF投与およびOVA+poly(I:C)投与マウスのNALTおよびNPにCD8(+)細胞の誘導が認められた。一方CLNにおいてはCD8(+)細胞の誘導は認められなかった。OVA+poly(I:C)投与マウスに誘導されたCD8(+)細胞は、NPにおいてはその大半をOVA特異的CTLが占めていたが、NALTにおいてはOVA特異的ではないものがかなりの割合で含まれており、アジュバントであるpoly(I:C)特異的CTLが誘導されたことが示唆された。一方、OVA+SSF投与マウスに誘導されたCD8(+)細胞は、NALT、NPいずれにおいてもその大半をOVA特異的CTLが占めており、SFFそのものはCTLを誘導しないことが示唆された。これらのことから、SSFは共投与した抗原特異的な細胞性免疫を投与局所に誘導する自身に抗原性のないアジュバントであり、がんワクチンとして利用しうる可能性が示された。
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