研究課題/領域番号 |
24500531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
相澤 守 明治大学, 理工学部, 教授 (10255713)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオセラミックス / アパタイト / ホウ素含有アパタイト / 免疫細胞 / T細胞 / NK細胞 / フローサイトメトリー / イムノセラミックス |
研究概要 |
これまで生体機能の一部あるいは全部を代替する目的で開発されている「バイオマテリアル(生体材料)」は人工材料であるため、免疫による拒絶がないことが一つのメリットであった。しかしながら、もし材料と免疫系を司る細胞とをin vitro系で培養し、それらの相互作用を通して、免疫系を司る細胞を活性化させることができれば、高額なサイトカインを利用することなく、患者の回復力を増強させて、病気を治癒させることが可能となる。本提案では、バイオセラミックス表面を2つの方法、すなわち表面修飾および固溶体形成により免疫系を向上させるデザインについて検証するとともに、その免疫系の発現をフローサイトメーターで評価する。 今年度は、特に「固溶体形成」によるアプローチを推進した。より具体的には、超音波噴霧熱分解法により、ホウ素含有アパタイト(BAp)粉体を合成し、そのキャラクタリゼーションを行なうとともに、緻密なセラミックスを作製した。BApはその結晶構造内にBO2基を備えたアパタイトであり、このBO2基が中性以上のpHで解離してB(OH)3を形成する。その結果として、BApにレクチン様の表面が形成され、それらが細胞の糖鎖と相互作用し、例えば、免疫系の細胞を活性化することが推測される。 当該年度は、マウスから脾臓を取り出し、赤血球を取り除き、脾臓細胞の回収を行なった。また、この脾臓細胞から、NK細胞の濃縮を行なった。脾臓細胞およびNK細胞をBApセラミックス上に播種して所定の期間培養した。細胞を回収した後、フローサイトメトリー解析を行ない、各種免疫細胞の割合および分化段階を調査した。その結果、脾臓細胞をBApセラミックス共存下で培養すると、T細胞の割合が高い値を示し、またNK細胞が活性化したことから、BApセラミックスは免疫系に働きかける機能を持った新規なバイオマテリアル 「イムノセラミックス」と結論できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、当該研究は、申請時に記載したマイルストーンに沿って概ね順調に進展している。当該研究では、免疫系に働きかけるイムノセラミックスを創製し、免疫機能を調査することを目的としており、以下の3つの項目で推進している。 1) 免疫系に働きかけるイムノセラミックスの試製 2) NK細胞の効率的な採取方法およびその機能発現検出方法の検討 3) 試製したイムノセラミックス共存下でのNK細胞の培養と機能発現 平成24年度は、上記のなかで、特に1)および2)に注力した。1)では、「アパタイトセラミックス上へのイノシトールリン酸の表面修飾」および「ホウ素含有アパタイトの作製と表面特性」いずれも計画通り研究を実施し、研究業績からも分かるように、ある一定の成果をあげている。特に、BAp関連では、H25年度に特許出願も計画している。また、2)では、「マウス脾臓およびリンパ節からのNK細胞の採取と培養方法の確立」に成功し、さらに「フローサイトメトリーによる採取したNK細胞の機能発現」についてもプロトコルの作成に成功しており、H25年度はこのプロトコルを活用して、「イムノセラミックス」の創製とその免疫機能について研鑽を深めたい。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度に確立したプロトコルを用いて、i) イノシトールリン酸を表面修飾したアパタイトセラミックスおよびii) ホウ素含有アパタイトセラミックス上で培養したNK細胞の機能発現を調査する。i)では、コントロールとして、イノシトールリン酸を固定化していない水酸アパタイトとし、これと比較して、NK細胞の増殖性や表面抗原の有意な発現が認められた場合には「ポジティブ」な結果として受け入れる。さらに、NK細胞の「細胞障害性」についても評価を行なう。また、ii)では、ホウ素を含んでいない純粋な水酸アパタイトをコントロールとして実験を行なう。ここでは、2つのプロセスを検討するが、より高い活性を示す材料を「イムノセラミックス」のモデル材料とする。 ついで、本研究で決定したイムノセラミックスをモデル材料として、NK細胞が侵入可能な細孔径(150-300 m)を備えた「多孔質セラミックス」を作製する。この加工により、セラミックスとNK細胞とが相互作用できるサイトが大幅に増大する。この多孔質セラミックスを「ラジアルフロー型バイオリアクター」に装填し、三次元循環培養することで、高活性化なNK細胞を効率的かつ大量に培養可能な「バイオリアクターシステム」を構築する。将来的には、このシステムを活用し、「LAK療法」の臨床応用につなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に、本申請で計上している予算は、i) 消耗品、ii) 旅費、iii) 謝金、iv) その他である。i)では、研究遂行に必要な消耗品であるガラス器具や合成用試薬、細胞培養用試薬・器具、論文別刷り代などを計上している。ii)では、主に研究成果を発表するための旅費である。iii)の謝金は、実験補助の学生アルバイト代および有識者からの専門知識提供に係わる謝金などである。iv)は、通信用の郵便費などである。これらはいずれも研究の推進に不可欠な予算であり、使用計画に計上している。
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