超高齢化が急速に進む現代社会において,人々が健やかな生活を続けるために安全かつ確実な骨治療薬の開発は不可欠である。本研究は骨治療に有効なポリマー医薬の創出を目指し,骨のリモデリングに関与する細胞の機能におよぼすポリリン酸エステルの作用を詳細に調べ,骨粗鬆症や骨転移の治療薬として有効なポリマーの分子形態の最適化を目的として企画された。最終年度では、ポリリン酸エステルが骨芽細胞および破骨細胞の生育に与える影響について詳細に調べ、ポリリン酸エステルが骨治療用ポリマー医薬として有用であることを明らかにした。 前年度までに合成法を確立したポリ離散エステル(PEP・Na)を含む培地を用いてマウス骨芽細胞を培養したところ、骨芽細胞の生存率を全く低下させることなく、高い適合性を示すことを明らかにした。赤血球を用いた溶血実験も行ったが、PEP・Naの溶血活性は認められず、細胞膜障害性も極めて低いことがわかった。一方、破骨細胞を培地に懸濁させ、ウシ骨片上に播種したところ、培地中のPEP・Na濃度が増すにつれて破骨細胞の接着が抑制された。破骨細胞による骨溶解もPEP・Naによって効果的に抑制されることが明らかとなった。 本研究を通じPEP・Naが、破骨細胞を選択的に脆弱化する効果が認められ、骨粗しょう症などの骨疾患に有効なポリマーを提示するに至った。
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