研究課題/領域番号 |
24500534
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
柚木 俊二 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (20399398)
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研究分担者 |
安田 和則 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20166507)
近藤 英司 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (60374724)
畑山 博哉 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (80614552)
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キーワード | 人工腱 / コラーゲン |
研究概要 |
1)平成24年度に作製した製造装置と製造条件を用いて、構造制御された3種類の代表的人工腱マトリクスを製造し、滅菌を行い、動物実験に供する: 人工腱マトリクスの量産を終えた。今回開発した製造技術は、mm~cmスケールのサイズの立体的なコラーゲン線維束を作製できる世界初の量産技術であり、国際特許出願を進めている。そのための製造パラメータの検証と配向化メカニズムの解明を多角的に実施した。製造パラメータとしては、線維形成速度(37℃到達後5 s以内)、剪断速度(1~10 (1/s))、剪断付与時間(ゲル化開始後<20 s)、および剪断を付与するための2平板の温度差(平板間距離3 mmで顕在化)が明らかになった。配向度を自在に制御することが可能になった。配向化インプラントの引っ張り弾性率と破断応力は、配向していないものを比べ、それぞれ3.2倍(420 kPa)および2.3倍(63 kPa)に増加した。配向化インプラントは骨芽細胞様細胞に対して接触誘導を示し、細胞が配向した。In vivoで細胞が認識するに十分な配向度を有していることが示唆された。 2)上述の3種類の人工腱マトリクスの家兎モデルへの移植: 移植サンプルのゲニピン架橋による着色、および細胞実験で確認されたゲニピンによる細胞接着阻害が明らかになり、移植実験を保留してゲニピンを用いない製造方法の開発を実施した。水溶性カルボジイミドおよびコハク酸イミドの混合溶液で配向化に成功し、インプラントの量産を実施中である。また、上記方法で製造した配向コラーゲン線維束は緻密ゲルであるため細胞侵入性が低いと予想され、凍結乾燥法を用いた多孔質インプラントの製造も実施した。コラーゲン配向度、ポロジティの異なるこれらのインプラントを用いて早急に動物実験を進める。 3)家兎の膝外腱モデルおよび4)組織の摘出と解析: まだ至っていない。2)の動物実験を平成26年6月に実施し、9月に解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際特許出願を急ぐ必要があるため、その準備のための工学実験にウェイトがかかってしまった。しかし、配向コラーゲン線維束の大型化、量産化、配向度の制御、架橋度の制御、多孔質化など、動物実験のための多様なインプラントを量産済みであり、医学側の腱リモデリング評価方法は既に確立し、実績も豊富である。平成26年度において目標とする成果が得られると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度において、立体的な配向コラーゲン線維束の量産化を終え、構造制御技術を確立し、力学試験および細胞培養による接触誘導の評価を終えた。動物実験に向けた工学的評価が完了したので、本年度は‘人工的に作製したコラーゲン線維マトリックスの配向が腱リモデリングに及ぼす影響’に関する動物実験による評価に注力する。 平成26年度の前半に、構造制御された人工腱マトリックスの動物実験を実施する。“配向コラーゲン線維束”および“非配向(ランダム)コラーゲン線維束”をベースに、その配向度と架橋度ならびにポロジティを制御した合計6種類の人工腱マトリクスを製造し、動物実験に供する。以下に記述する評価からリモデリングに影響する因子を抽出し、本試験で使用する3種類の代表的人工腱マトリクスを決定する。1)電子顕微鏡観察と引っ張り試験により、人工腱マトリクスの超微細構造と物性を明らかにする。2)兎膝蓋腱の中央1/3を切除して欠損部を作製し、コラーゲン構造を制御した6種類の人工腱マトリクスを移植する。膝蓋腱‐マトリクス‐脛骨複合体を摘出し、移植後3および6週で各群5頭ずつ都冊し、生体内再構築現象の解析に供する。3)Video-dimension analyzerを組み込んだ生体軟組織材料試験システムを用いて、37℃生食水中での引っ張り試験を行い、移植後のマトリクス野生体力学評価を行う。4)移植後マトリクスの組織切片観察を行う。 以上の評価により、腱リモデリングに影響を与えるコラーゲン線維構造が明らかにする。そこで平成26年度の後半には、試験数を増やした同様の評価を進め、信頼性の高いデータを得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で多用する薬品‘コラーゲン溶液’は単価が50,000円/1kgであり、消耗品経費のうち支配的な位置を占める。所内経費で購入済みのコラーゲン溶液が数本余ったため、本研究で購入するコラーゲン溶液の本数が予想を下回った。 動物実験用インプラントを大量生産するためのコラーゲン溶液の購入費にあてる。
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