研究課題/領域番号 |
24500536
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
水戸部 一孝 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60282159)
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研究分担者 |
齊藤 元 秋田大学, 医学部, 講師 (20323149)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハイパーサーミア / 感温磁性体 / 低侵襲 / ガン治療 / QOL / 深部温度計測 / 温熱療法 |
研究概要 |
本研究では呼吸器系の末期ガン患者のQOL向上のための低侵襲温熱治療技術の構築を目的としており,本研究課題では非侵襲深部温度モニタリング機構を備えた新たな治療機器の開発および改良と,臨床応用に向けた物理実験および動物実験による妥当性評価の実現を目指す. 平成24年度は,「複数のピックアップコイルからの信号を用いて体動の影響を低減するための計算理論とアルゴリズムを考案し,ロバスト性に優れた体動影響除去法の提案」を目指した.そこで,そのために必要な「体動影響を低減可能な磁束ベクトル推定技術」のアイディアを物理実験により検証し,計算理論の最適化を図った.はじめに,3つの検出コイルから得られる信号を同期検波するためのアルゴリズムを考案した.さらに,磁場印加検知ユニットを試作し,ロックインアンプをコンピュータに接続して,実時間で目標温度に到達したか否かを検知する自動計測プログラムを作成した.ここでは,既存設備である磁場印加検知ユニットの実現に必要な高周波誘導加熱用電源,冷却用チラー,3台のDSPロックインアンプ,リファレンスデータの収集に必要な光ファイバー温度計およびPCを組み合わせて温度計測治療システムを構築した. さらに,次年度以降に実施予定の「センサコイルの回転走査による同期検波手法」の予備実験を1年前倒しして進めており,新たに導入したロボットアームの制御アルゴリズムも一部作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度実施予定のロボットアームを用いた回転走査機構を組み合わせた低侵襲温熱治療システムの予備実験を1年前倒して進めており,回転走査は手動であるが方法論の妥当性を検証できた点が当初の計画以上に進展していると評価した理由である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の達成目標は以下の3項目である. I.複数のピックアップコイルからの信号を用いて体動の影響を低減するための計算理論とアルゴリズムを考案し,ロバスト性に優れた体動影響除去法を提案する. II.体表面から60mm以内の患部が最適な治療温度(43℃)で維持されるように非侵襲的に温度を計測しながら誘導加熱用電源を制御する低侵襲温熱治療システムを試作する.加えて,本手法の妥当性と安全性を物理実験および動物実験の両面から検証する. III.体内に埋め込まれたクリップ,義歯等の金属の発熱リスクを回避するために必要な(金属探知機に磁場解析シミュレータを組み合わせた)安全性評価技術を構築する. 既にIを達成しているため,次年度以降はIIおよびIIIの達成を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,低侵襲温熱治療システムを試作する.さらに,物理実験により本手法の妥当性を検証することで,到達目標のIIの達成を目指す.この過程で,S/N比の向上に不可欠となる磁場印加検知ユニットの最適な動作パターンを模索する. 平成25年度後半は,磁場印加検知ユニットに回転走査するための動力機構を組み合わせた低侵襲温熱治療システムを試作する.臨床での利用を想定すると,横たわった患者の身体に合わせて磁場印加検知ユニットの高さを調整し,三次元空間で正確に回転走査しなければならない.そこで,(前年度導入した)高い再現性と汎用性を兼ね備えた最先端のロボットアームにコイルを装着することで,誘導加熱用磁場印加ユニットと連動した磁束ベクトル検知ユニットに改良する予定である.なお,この開発には過去に蓄積したヒトのMoCapデータの高精度な立体映像再現技術を活用できると考えている.
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