研究課題/領域番号 |
24500538
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
檮木 智彦 昭和大学, 薬学部, 兼任講師 (70431955)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 輸液管理 / 自動化 / シミュレーション / モデリング / 脳循環 / 水分分布 / 脳組織 / 脳脊髄液 |
研究概要 |
本年度は、輸液管理の自動化の基礎となる体内水分分布モデルを構築するにあたり、これまで研究を重ねてきた脳低温療法との関連から、まず脳組織における水分分布を表現するモデルの構築を行った。 このモデルは、前、中、後の大脳動脈の支配領域について灰白質と白質をそれぞれ考慮することから脳組織を6つのパートに分割し、各パートの水分流入量、水分流出量、貯留水分量、および圧力を算出するものである。そのために、まず頸動脈、椎骨動脈、脳底動脈輪、各脳動脈、静静脈洞、および頸静脈の長さ、直径、血管抵抗をパラメータとし、平均動脈圧を入力、各パートの血圧と循環血流量を出力とする脳循環モデルを構築し、これに毛細血管から組織への水分移動、脈絡叢における脳脊髄液の産生、脳組織内の水分移動、脳脊髄液循環、およびクモ膜顆粒における脳脊髄液の吸収という要素を加えた。 モデル構築の結果、平均動脈圧の変化と各血管の形状と抵抗の変化によって生じる各パートの血圧、潅流圧、循環血流量、組織圧、水分流入量、水分流出量、および水分貯留量が解析可能となった。このことは、血圧低下や脳血管抵抗に起因する脳虚血時の脳循環動態と脳組織水分分布をシステム工学の観点から扱えるようになったことを意味する。したがって、例えば心停止後脳症時や脳梗塞時の病態生理の理解と脳組織水分分布の推定だけでなく、輸液による脳循環動態と脳組織水分分布の変化も解析することができるようになった。なお、これらの成果については、現在、論文を執筆中である。 上記のモデルに並行して、脳組織に限定しない、より一般的なモデルの構築も進めている。こちらは、来年度中に組織水分量分布の算出を可能にする計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、今年度中にオンライン測定サブシステム、生理量の推定サブシステム、状態の判断・警報サブシステム、および推定・判断の検証・調整サブシステムの開発に着手することになっていた。この中で、所属研究機関の変更もあり、測定と生理量推定の基礎となる水分分布モデルの構築を先行させ、主にこれの研究を行った。したがって、状態判断・警告サブシステムと推定・判断検証・調整サブシステムの開発は来年度から行うこととなったが、この遅れは十分に取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画からの変更点としては、状態判断・警告サブシステムと推定・判断検証・調整サブシステムの開発を来年度早々に着手することがある。このことにより、システム全体の完成も少々遅れる見込みであるが、来年度中の完成をと臨床試験を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度に着手できなかった状態判断・警告サブシステムと推定・判断検証・調整サブシステムの開発については、今年度の研究費から必要額分を残してあり、不足はない。したがって、研究費の使用計画については当初計画から変更がまったくない。
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