研究課題/領域番号 |
24500538
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
檮木 智彦 昭和大学, 薬学部, 兼任講師 (70431955)
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キーワード | 輸液管理 / 自動化システム / 物理モデル / 水分分布 / 生体組織 / スターリングの仮説 / Fickの拡散法則 |
研究概要 |
本年度は、輸液管理の自動化の基礎として組織における一般的な水分移動モデルを構築した。 このモデルは、動脈、毛細血管、静脈、およびリンパ管の脈管と組織の細胞と間質からなるコンパートメントモデルであり、スターリングの仮説とFickの拡散法則を原理の基礎としている。各部位の透過係数や反射係数、および細胞コンプライアンスをパラメータとし、毛細血管動脈側と間質間の水分移動、毛細血管静脈側と間質間の水分移動、間質と細胞間の水分移動、および間質とリンパ管間の水分移動を表現する連立微分方程式を内包している。本モデルをルンゲクッタ法などの数値解析により解析すれば、毛細血管から間質への水分移動速度、間質から細胞への水分移動速度、間質からリンパ管への水分移動速度、細胞内圧の変化、細胞内電解質濃度の変化、細胞内膠質濃度の変化、間質膠質濃度の変化、細胞内液量変化、および間質液量変化を計算することができる。 このモデルを輸液管理状態の自動判断に用いるには、臓器・組織ごとにパラメータが異なるので完全とは言えないが、少なくとも平均動脈血圧、静脈血圧、リンパ管内圧、血漿電解質濃度、血漿膠質濃度を入力としたときの組織内水分量分布を理論的に考慮する骨格が整ったといえる。これらの成果については来年度中に学会等で発表する予定である。 本モデルの精度を高めるためには、モデルの臓器・組織ごとの分割、臓器・組織ごとのパラメータの収集と設定、およびそれらの統合が必要である。特に、パラメータの収集ではこれまでに発表されている文献の精査だけでなく、生理学の専門家の協力を得ることも視野に入れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、昨年度中にオンライン測定サブシステム、生理量の推定サブシステム、状態の判断・警報サブシステム、推定・判断の検証・調整サブシステムの開発を行い、今年度はその試験を行うことになっていた。しかし、所属研究機関が2度も変更になったことから、両年度とも測定と生理量推定の基礎となる水分分布モデルの構築を先行させている。したがって、状態判断・警告サブシステムと推定・判断検証・調整サブシステムの開発が来年度の課題であり、早急に着手する予定である
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今後の研究の推進方策 |
所属研究機関の変更により、当初から研究計画を変更し、状態判断・警告サブシステムと推定・判断検証・調整サブシステムの開発を来年度早々に着手する。このことにより、来年度中にはシステムの設計を完成させ、装置としての具体的な開発と臨床試験はその後の課題として延期せざるを得ないが、完成の道筋はついている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年4月、平成26年4月の2回、所属研究機関が変更になり、研究を遂行する環境や条件が変化したので研究計画を修正した。これにより、平成24年度、平成25年度の使用額が減少し、次年度に使用額が生じた。 今年度に着手できなかった状態判断・警告サブシステムと推定・判断検証・調整サブシステムの開発については、今年度の研究費から必要額分を残してあり、不足はない。したがって、研究費の使用計画については当初計画から変更がまったくない。
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