研究課題
動脈硬化を診断するための検査法の一つに頚動脈超音波エコー検査がある.本検査では,超音波エコーを用いて頸動脈の形状や心拍動に伴う動きを観測する.通常,使われる超音波エコーはBモード画像と呼ばれる2次元断面像である.頸動脈は3次元形状を持つため,全体像を知るためには,検査者が超音波プローブを移動させて様々な断面像を観察し,3次元形状を思い浮かべるしかなかった.そのため,正しく全体像を推測するためには,超音波プローブの操作のみならず,3次元形状を思い描く空間認知能力なども必要であり,検査者に相当な熟練が求められる問題があった.本研究では,ある断面での超音波Bモード画像を1心拍周期以上の時間撮影することを,超音波プローブをスライドさせることにより様々な断面で行うことにより3次元的な超音波像を計測し,計算機により各断面での頸動脈の位置と時間変化を求め,頸動脈の3次元形状およびその心拍動に伴う動き,つまり4次元可視化する手法を開発した.計算機画面上でマウスなどを操作することにより,様々な方向から頸動脈の3次元形状を観測することが可能であり,さらに視点を頸動脈内部に移動させることにより,あたかも人が血管内部に入り込んで観察しているかのように,動脈硬化の進行に伴い発生するプラークなどを描画することが可能になった.また,3次元形状に加え心拍動による動きを入れた4次元可視化により,個々の断面を個別に観測していただけでは分かりにくかった局所的な動きの悪い部位を容易に発見できるようになり,動脈硬化症の評価が格段に容易になった.今後,動脈硬化の新たな検査法として確立するためには,医学部附属病院と連携して患者に対する臨床的評価を行い,成果をまとめて薬事申請を行う必要がある.さらに患者に対する病状説明には3Dプリンタにより頸動脈の3次元形状をプリントアウトして提示することも有効である.
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IFMBE Proceedings of 6th European Conference of the International Federation for Medical and Biological Engineering
巻: 45 ページ: 468-471
Proceedings of Life Engineering Symposium 2014
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