研究課題/領域番号 |
24500543
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
原 武史 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10283285)
|
研究分担者 |
片渕 哲朗 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 教授 (00393231)
藤田 廣志 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10124033)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | FDG-PET / コンピュータ支援診断 / 観察者実験 |
研究概要 |
本年度は,体幹部正常モデルの構築手法の開発と,経時差分処理への適用を行い,集積の変化を自動で検出する経時差分CADシステムについてプロトタイプ開発を行った.体幹部正常モデルはリサンプリング法を用いて構築した.Jarque Bera検定を用いて従来のモデル構築手法と,リサンプリング法を比較した結果,リサンプリング法は従来のモデル構築手法より高い精度の正常モデルを得られるという結果を得た.システムの検出精度を求めるために,経時変化のある症例を用いて異常集積の検出手法の実験を行った結果,異常集積124個中,119個を正しく異常と検出できた.異常集積の検出結果を基に,経時差分の実験を現在画像,過去画像共に異常集積の検出に成功した55症例を使用し行った結果,真陽性率96.0%,1症例あたりの偽陽性数31.1個の検出性能を得た.今回検出できなかった集積は主に肺尖部の集積である.これは位置合わせの精度の問題か,呼吸による位置ずれが問題なのかを今後検討する必要がある. さらに,開発した経時差分CADシステムの出力結果が医師の診断に及ぼす影響を調査した.医師2名について読影実験を行った結果,CADシステムを用いた場合において読影精度の向上が見られた.また,読影時間を解析した結果,1症例あたりの読影時間が40.8秒から38.5秒へ減少し.読影者のCADを用いた場合と用いない場合のAUCに対してt検定を行った結果,有意水準5%で統計的な有意差は確認できなかった.読影人数の不足が要因として考えられるので,今後人数を追加して実験をすることが必要である. これらの結果から,経時変化を正確に追跡する必要がある抗がん剤治療などの画像診断においてCADシステムは医師の読影の負担軽減と診断能の向上に寄与できる可能性を示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PET/CT画像のデータ収集は,200症例を達成しており順調である.観察者実験については,現在で追加の2名を予定しており,2013年4月中に合計4名,2013年月までに6名を計画している.PET/CT画像におけるCT画像上での臓器の自動抽出処理に若干の遅れがある.これは,PET/CT像の解像度が体軸方向には低いためである.しかしながら,プロトタイプの構築は完成し,また,観察者実験も初期ながら実施できたことから,おおむね順調に進展したと言える.
|
今後の研究の推進方策 |
PET/CT画像の追加収集(目標:2機種600症例)を行う.そのために,協力病院の医師/放射線技師との連携を強化する.観察者実験では合計6名の結果を得る.正常モデルの構築に関しては,CT画像の利用による臓器分割結果を活用し,Point-Distribution-model(PDM)およびThin-plate-spline(TPS)法による非剛体変形法を適用した臓器表面形状の位置合わせを行う.そして,その変形パラメータを利用したPET像の変形を実現し,高精度かつ,CT像に裏付けされた正常モデルの構築を行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
収集したデータの保管のためのハードディスク/RAID装置およびバックアップ装置の購入を予定する.また,データ収集(東京都内,愛知県一宮市内)のため,協力病院への出張費,国内学会(電子情報通信学会・医用画像研究会,核医学学会,核医学技術学会)と国際学会(SNM,RSNA)での報告を予定する. なお,初年度は,予定していたデータ整理の補助を依頼しなかったため,また,計測用の物品を安価に購入できたため,予定よりも予算の執行が少なく,次年度への繰越金(61496円)が発生した.これは次年度のデータ整理補助費用に配分する予定である.
|