内視鏡下手術をデジタル記録する「サージェリレコーダ」の開発を推進してきた。従来、視覚を内視鏡像のみに依存し、手術自由度が大きく制限された腹腔鏡下手術においては、客観的な手術解析が難しく、また主観的な誤判断から生じる重篤な合併症などを効果的に検証、回避するための手法が存在しなかった。そこで、手術鉗子に装着する位置・力センサの抜本的な小型スマート化のための基盤研究開発と、蓄積したデータのシームレスな自動データ抽出・提示システムの提案開発とを行った。 サージェリレコーダに用いるために開発してきた汎用装着型の位置姿勢および力計測用センサユニットを、手術現場以外において検証することで、基礎的な研究知見やデータを取得できるのではないかと考え、外科手術の範疇にとどまらず、広く医療福祉用途への応用可能性を模索することにも注力した。そのために、鍼灸師、臨床工学技士、看護師など、多様なバックグラウンドを有するスペシャリスト等との学術的交流を積極的に行ってきた。具体的には、医師や鍼灸師が行う触診を客観的に判断するための指装着型センサユニットとして改変し、位置姿勢データならびに力データの収集・解析プログラムの開発と、データ抽出・提示プログラムの開発とを行い、ユーザとしての医師等とのディスカッションを適宜行いながら、効果的なデータ解析・提示手法を模索してきた。その結果、現場における要求スペックを満たしたシステムへと近づけることができた。今後は、本成果を手術現場におけるデータ収集・解析・提示手法へ応用することで、当初の目的であるサージェリレコーダの最適化を図ることが可能になると考える。
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