研究課題/領域番号 |
24500545
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松村 泰志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90252642)
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研究分担者 |
三原 直樹 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (20379192)
萩田 紀博 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, その他部局等, 研究員 (40395158)
武田 理宏 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70506493)
篠沢 一彦 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, その他部局等, 研究員 (80395160)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 膵癌 / 肝癌 / がん / 早期診断 / 検体検査 / 判別分析 / データウェアハウス / データマイニング |
研究概要 |
一般的な検体検査結果の値とその変動から、癌の発生を疑うことが可能かを、大阪大学医学部附属病院の診療データウェアハウスのデータを使って解析した。院内がん登録のデータから、2007年~2011年に診断された胃癌・大腸癌、肝癌、膵癌の患者を特定し、診断日を取得した。一般的な検体検査78項目について、診断日から1ヶ月遡った期間の最大値(max)、最小値(min)、3年遡った期間の最大値、最小値のデータを取得し、1ヶ月最大値と3年最小値の差(inc)、3年最大値と1ヶ月最小値の差(dec)を求めた。胃癌・大腸癌は366例、肝癌は182例、膵癌は203例のデータが得られた。また、癌の病名が無い患者を対照群とし、2011年に受診し、一般検査8項目以上を実施した患者21106例を抽出し、診察日から遡って同様の処理をした。各癌疾患群について、50%以上の症例で値がある項目(胃癌・大腸癌:24、肝癌:26、膵癌:28)のmax、min、inc、decを説明変数とし、各癌疾患群と対照群を判別できるかを判別分析のステップワイズ法を使って分析した。 胃癌・大腸癌は、Hb_decが判別に有効であり、感度は29.0%、特異度は94.0%、陽性尤度比は4.8であった。肝癌は、AFP_incが判別に有効であり、感度は51.4%、特異度は98.4%、陽性尤度比は31.8であった。膵癌は、rGTP_inc、Plt_dec、TP_dec、WBC_minが判別に有効であり、感度は17.8%、特異度は99.2%、陽性尤度比は23.2であった。 以上より、胃癌・大腸癌については、検体検査結果から発症を予測することは難しかったが、肝癌では、AFP値の増加により発症をかなりの確度で予測可能であることが確認できた。膵癌については、複数項目の値の変動の組み合せから、ある程度の確度で発症を予測できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、平成24年度は、データマイニングを行うための素データを、大阪大学医学部附属病院の病院情報システムのデータウェアハウスから抽出することを目標としていた。 大阪大学医学部附属病院では、高い精度で院内がん登録が実施できており、癌患者を特定することは、院内がん登録データから容易に実施できた。癌患者のIDとその患者の診断日から、分析に利用する検体検査の項目データをデータウェアハウスから抽出することができた。当初期待していたほどの数の検査項目がされてはいなかったが、分析するには十分な項目データが得られた。対照とするデータの抽出は、がん患者の10倍程度を目標に実施したところ、かなりの時間を要したが、目標期間内に実施できた。 平成24年度から25年度にかけて、データマイニングを行う計画であった。平成24年度は、胃・大腸癌、肝癌、膵癌について、判別分析を使った解析を実施し、ほぼ期待通りの結果を得ることができた。データ抽出に当初の予定よりやや時間がかかり、また、病院外にデータを渡すための手続きに時間を要したため、他の分析法の適用の実施について、当初予定よりやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、引き続き同じデータセットを使い、他の分析法を適用させ、判別の精度を比較評価し、どの方法がより判別性能が高いかを調べる。最終的には、電子カルテシステムに組み込み、医師の判断を支援することが目標であるので、ニューロコンピュータ等の判別のための系を外部に取り出しにくい方法は適さず、判別式や判別ルールの形で簡単に外部に取り出しが可能で移植しやすい方法である必要がある。この観点でも判別法を評価し、この目的のために適した方法を選択する。確立させた分析法を、他の癌患者データについても適用させ、判別計算式または判別ルールの抽出を行う。 次のステップとして、抽出した判別式・判別ルールを組み込み、電子カルテシステムから必要データを取り込み、判定をしてその結果を医師に伝える診断支援システムの開発を目指す。この診断支援システムのイメージを評価するために、試作システムを開発する。こうした診断支援システムを、施設を越えて一般化させ、電子カルテシステムに組み込むことを想定した場合に、何を基準化させる必要があるかなどを検討し、システムの設計を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、統計分析ソフトを購入しデータ解析処理を行った。平成25年度の上半期は更に解析を継続するが、下半期からは、解析結果を組み込む診断支援システムの開発を開始する。本システムでは、電子カルテシステムから、当該患者について目的とする検体検査結果データを取り出すモジュール、検査結果を処理して判定するモジュール、判定結果を表示するモジュールで構成される。このうち、電子カルテシステムから目的とする検体検査結果データを取り出すためのモジュールは、電子カルテベンダーに作成を依頼する必要がある。平成25年度は、このプログラム作成に支出する予定である。 計画では、平成25年度に海外での発表する計画であったが、現時点で成果を発表できるほどにはまとまっていない。平成25年度の上半期までの成果を国際学会の論文として投稿し、平成26年度に海外発表を行う予定である。国内学会には、平成25年度中に成果発表を行う。
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