研究課題/領域番号 |
24500547
|
研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
松岡 雄一郎 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能計測研究室, 主任研究員 (80372150)
|
キーワード | MRI / 消化管 / phased array RFコイル / ナビゲーション / 内視鏡 |
研究概要 |
内視鏡検査・治療の安全性、確実性の向上を図るため、放射線被曝の無いMRIと内視鏡を融合したMR内視鏡システムの研究開発を進めている。今年度は、上部消化管である胃に関して、胃壁構造をMRI撮像する際のSNR向上と撮像可能範囲を拡大するため、胃腔内に設置する腔内RFコイルを2チェンネルphased array構造とするための形状、配置などの検討を行った。 一方、MR内視鏡システムによる内視鏡検査・治療の実用性、安全性などを向上させるため、平成24年度に構築したナビゲーションシステム機能をさらに改良することを重点として研究開発を行った。改良および追加した機能は、体外設置RFコイルまたは腔内RFコイルで取得したMRIボリュームデータを利用したMPR(multi planer reconstruction)画像①の表示、内視鏡先端から任意の位置における直交断面MRI画像②の表示、MRIボリュームデータから構築したボリュームレンダリング3D画像と①および②の画像への内視鏡の位置・姿勢情報の組込み、さらに内視鏡映像の表示であり、これらを同時にリアルタイム表示・制御する機能である。これらの機能を、MRIシールド室内でワイヤレスリモートコントローラーを用いて選択、操作できることを確認すると同時に、改良点を明らかにした。 また、これまではMR対応内視鏡を使用する際の送気が困難であった。そのため、MR対応内視鏡の消化管への挿入や消化管内での視野確保が非常に難しかったが、送気方法を改良することで改善し、摘出ブタ組織においてMR対応内視鏡の挿入と視野確保が達成し得ることを確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Phased arrayコイルの開発に関しては、コイル形状や配置などを設計中であるため、当初の計画より遅れている。一方、消化管内phased arrayコイルでのMRI撮像を効率よく行うために必要なナビゲーションに関して、機能の高度化と検証、改良箇所の明確化、などを達成した。この内容は、当該研究の目標である消化管の高分解能MR撮像とプロトンMRSの実用化を考えた場合に、迅速にMRI撮像領域を特定して撮像条件を設定し、取得したMRI画像や内視鏡および消化管内phased arrayコイルの位置や姿勢のデータを効率良く提示することを可能にするため、内視鏡検査・診断の安全性や確実性、さらには効率の向上に資すると考える。したがって、全体的な計画の一部を達成していると考えるため、当初の研究計画に対してやや遅れていると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
Phased arrayコイルの数値解析と試作を行い、摘出組織およびファントムモデルに対してコイル共振特性の評価、MRI撮像によるSNRや感度領域の評価を行う。また、消化管内挿入後のphased arrayコイルの共振特性のズレを補正する遠隔同調・整合回路も作成し、ファントムモデルおよび摘出組織に対するphased arrayコイルの配置に応じて遠隔同調・整合調整する前後でのコイル共振特性の評価、およびMRI撮像によるSNR評価を行う。それらの結果をもとにphased arrayコイル構造や同調・整合回路の改良を行い、動物実験で消化管に挿入、設置した場合のphased arrayコイルの共振特性の変化、遠隔同調・整合による共振特性の評価、およびMRI撮像によるSNR評価やアーチファクト評価などを行う。動物実験では、心拍動や血流などによる動きの影響を受けにくい領域を撮像対象とする予定であるが、動きのアーチファクトを軽減するために心電同期撮像も試みる。なお、消化管内でのコイル形状や姿勢を如何に保持するかも課題である。対策の1つとして、チューブ内へのコイル組込みが有用と考えており、このコイル形状でMRI撮像に適した食道や大腸などを撮像対象とする予定である。胃を撮像対象とする場合は、コイル挿入方法の改善やコイル形状や姿勢の制御法を摘出組織やファントムモデルで検討したうえで動物実験を行う。 また、MRSに関しては、ファントムモデルを作成して計測条件の最適化を行い、摘出組織および動物実験で代謝物計測能の評価と検出能向上の対策を行う。いずれの実験でも、平成24年度、25年度で構築したMR内視鏡システムのナビゲーション機能を適用して、実用性に向けた改良と評価を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度はナビゲーション機能の改良と高度化を重点的に行ったため、phased arrayコイル試作や評価のための計上していた費用の使用が少なかった。Phased arrayコイルの試作、評価を次年度に重点的に実施する予定であるため、次年度に繰り越し使用を行うものである。 次年度では、試作するコイルのMRI撮像による評価を摘出組織および動物(ブタ)を用いて行う予定であり、主に実験用動物(ブタ)費用および動物用MRI装置の使用料として使用する計画である。また、研究成果を国内、海外の学会で発表するための論文投稿や学会参加費用にも使用する計画である。
|