研究実績の概要 |
【目的】左房Global Longitudinal Strain(LAS)を応用して左房圧推定が可能であるとの仮説を立て、左室の収縮能保持群(PEF群)と障害群(REF群)において検討した。 【方法】対象は洞調律の心疾患67例であり、PEF群33例、REF群34例の2群に分けた。平均年齢69±12歳。平均肺動脈楔入圧(PCWP)の測定を行い、24時間以内にドプラ心エコー検査を行った。心尖部四腔断面より左房LASを求め、収縮末期の最大LAS (Max-LAS)と心房収縮期のLAS(Late LAS)を計測した。パルス及び組織ドプラ法を用いて拡張早期と心房収縮期の左室流入血流速度(E, A)とE/A、僧帽弁輪運動速度(E’, A’)、E/E’を求めた。EをMax-LAS、Late LASで除してE/Max-GLS、E/Late LASを求めた。 【結果】PEF群、REF群において E/A (r=0.16, 0.53), E/Max LAS (r=0.21, 0.59)、E/Late LAS (r=0.24, 0.54)はPCWPと有意な正相関を示した。E/E’ (r=0.48)はREF群ではPCWPと有意な正相関(r=0.48)を示したが、PEF群では相関は見られなかった。ステップワイズ重回帰分析では、PEF群ではE/Late-LASが、REF群では E/Max LAS がPCWP の予測因子として採択された。PCWPの15 mmHg以上を予測する感度、特異度はE/Late-LAS がPEF群において 86% and 77%、E/Max LAS がREF群において75% and 100%であった。 【総括】拡張期の左房・左室間の血行動態はPEF群とREF群で異なる。左房LASは平均肺動脈楔入圧を予測するのに有用であるが、PEF群とREF群では異なる指標が必要であることが示唆された。
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