研究課題/領域番号 |
24500552
|
研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
青山 正人 広島市立大学, 情報科学研究科, 准教授 (40285424)
|
キーワード | 医用画像診断支援 / コンピュータ支援診断 |
研究概要 |
本研究では,左心室壁運動の解析のため,パラメトリックな方法とノンパラメトリックな手法を,並行に検討している.まず処理対象データである一心拍20時相分の三次元心電図同期心臓CT画像から画像処理を行うことで抽出した左心室壁(外壁,内壁)上の特徴点を用いる手法から述べる. ノンパラメトリックな手法では,得られた特徴点群を時相間で対応付けるため計算コストが高いDynamic Programming(DP)の代替となり得る手法について引き続き検討した.心拍は周期的な運動を行っていると考えられるので拡張末期→収縮末期→拡張末期の一心拍後に同じ特徴点に戻ってくるこという仮定の下,特徴点間の経路長が最短になる対応付けを行った.25年度は始点から探索する次時相の候補点数もパラメータ化し候補点数の影響も検証した(全特徴点を候補と考えるとDPになる).その結果,24年度までの結果よりさらに誤差が抑えられること,処理時間は探索する候補点数と誤差のトレードオフになることも定量的に確認できた.得られた対応関係からFree-form Deformation(FFD)を用いて心臓の形状変形も求めた. パラメトリックな手法では,基底が固定されている球面調和関数に関する24年度の研究を踏まえ,各時相の形状ベクトル20時相分×症例数の特徴ベクトルに対して主成分分析を適用し,健常例と異常例が主成分の特徴空間でどのように分布しているか検討した.健常,心筋梗塞軽度,重度の三症例で構築した特徴空間(第1から第3成分)に健常8,異常6症例を投影した結果,健常と異常が空間的に異なる位置に出現し,さらなる分析による診断支援につながる可能性が示唆された. 加えて,特徴点の抽出を行わず周期性に着目して画像に直接FFDを適用する手法,医師の定量評価のための壁厚計測のためのツールの検討も行うことができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノンパラメトリックな手法では心拍の周期性という心臓CTデータが持つ特徴を踏まえ,周期性に基づく直線的探索により,特徴点追跡の検討を進めている.25年度はさらに,改良を進め,探索範囲をパラメータ化した場合の追跡誤差低減の効果を定量的に評価し,これまでより改善されることを確認できた.また追跡結果を用いたFFDによる変形結果も求めた. パラメトリックな手法では,基底が固定されている球面調和関数での表現での検討を踏まえ,25年度は対象データから基底を求める主成分分析に基づく手法について検討した.健常症例と心筋梗塞軽度,重度の三症例に主成分分析を適用し第3主成分までの特徴空間に健常8,異常6の14症例を投影して評価した.その結果,健常例と異常例の特徴空間での位置が分離できる可能性が示唆されたことから入力として用いるデータの検討などを進めることで,未知症例の診断支援への展開が期待できることが分かった. さらに特徴点に基づく手法に加えて,画素値の周期変化に着目した定式化に基づき,画像データに直接FFDを適用する手法についても検討を行い,「周期運動する非剛体物体の変形位置合わせ」への研究へつながる検討ができた. 最後に壁運動の定量化の観点から心筋上に指定した画素周辺の注目領域(volume of interest, VOI)に基づく心筋運動の簡易計測ツールの実装を試み,VOIに適用する類似度の違いによる追跡結果への影響に関しても評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
ノンパラメトリックな手法で用いている特徴点追跡の改良について引き続き検討を進める.DPとの比較や,現在対応付けのコストとして用いている一周期分の経路長最小化について,比較対象の正解データを効果的に得るため,並列処理の導入による高速化を検討する.その状況によって効果的に高速処理できることが確認できれば,対応付けを画素値の分布に基づいて行ったり,大局的な運動制約を取り入れたりする改良も試みる. パラメトリックな手法についても25年度で示唆された健常,異常が特徴空間上で異なる位置に表れる傾向について,疾患や閉塞が見られる冠動脈との対応付けが行えるかどうか引き続き検討する.心筋運動の簡易計測ツールについてもユーザインタフェースの改善を行うなど,実際に試用できるようなものとする予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
計算機の性能に対する価格は日々低下し続けている.既存の計算機環境では直ちに研究ができなくなってしまうという状況ではなかったことから計算機関係のモデル更新のタイミングを見極めていたという面が多分にあり生じてしまった. 引き続き研究室で使用可能な計算機環境を有効に利活用しながらも,適切なタイミングで本予算を有効に活用して計算機環境の構築や研究の進展を図っていく.また,これまで以上に研究遂行上必要な会議への参加や情報収集のための旅費としても有効に活用していく計画を立てている.
|