最終年度はノンパラメトリックな方法に関する検討を行った. 処理対象のデータである一心拍20時相分の三次元の心電図同期心臓CT画像から画像処理により左心室壁(外壁,内壁)のエッジ点を抽出する部分の改良(半自動処理による抽出)を実現した.具体的には.左心室領域を抽出するために用いる「領域拡張法」の開始点としきい値,と領域拡張法によって得られる領域に存在する画素値の不均一に起因する穴や細かい凹凸を低減するために適用するオープニングとクロージング処理の回数を指定すれば良い.それらを指定すれば20時相分すべてのCT画像から処理対象の左心室領域が抽出できるようになり,負荷軽減が実現できた. 心筋は周期的な運動を行っているので,動きとしては時間軸に沿って,拡張末期→収縮末期→拡張末期,の一心拍データが繰り返され,最初に設定した始点に戻ってくるべきであると考えられる.この時間軸に沿った追跡を順方向追跡と呼ぶ.左心室壁のエッジ点追跡としては,拡張末期から収縮末期は心筋が縮む方向なので比較的良好な結果が得られる.それに対して収縮末期から拡張末期は心筋が拡張する方向なので良好に追跡するには広い範囲を処理するため時間もかかる点が問題である.そこで,後者の追跡については追跡方向を反転し,同じ開始点から逆向きに追跡し,収縮末期で同一点に一致するように追跡すること(双方向追跡と呼ぶ)で,探索範囲と処理時間の軽減を行った.Dynamic Programmingでの追跡結果を正解として,実データで比較評価したところ,追跡範囲と処理時間のトレードオフになるという妥当な結果が得られた.さらなる実装の改善による高速化が不可欠である. 一方,この双方向追跡を壁厚計測ツールへ適用することも試みた.予備実験結果としては,追跡によって得られる経路,経路長とも順方向追跡より双方向追跡の方が,改善できることが分かった.
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