研究課題/領域番号 |
24500554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大門 雅夫 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80343094)
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研究分担者 |
川田 貴之 順天堂大学, 医学部, 助教 (20532526)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心臓超音波 / 心機能 |
研究概要 |
本研究は、心筋ストレインを用いた新たな拡張能指標Global strain imaging diastolic index (SI-DI)の、左室拡張能評価における有用性を確立することを目的とする。平成24年度は、主にSIDIと圧データの比較検討を中心に行い、Global SI-DIの左室充満圧推定指標としての有用性を中心に検討した。 まず、左室収縮が正常で拡張不全を有する高血圧患者において、血中のBNPとGlobal SI-DIが有意に相関することを見いだした。さらにGlobal SI-DIは、これまでの拡張能指標と比べて最も強い血中BNPの規定因子であり、Global SI-DIは拡張能指標として有用であることが示唆された(2012年度J Echocardiogr に論文採択)。そこで、我々は心臓カテーテルを行った126例を対象に、カテーテル中に左室充満圧指標としての前心房収縮期圧(Pre-A圧)とGlobal SI-DIを同時に測定し、従来の拡張能指標と比較検討した。異なる3方向のストレインのうち、longitudinal方向のL-global SI-DIが最もよく左室充満圧と比例し(p<0.001, r=-0.56)、その相関は従来のE/e’(p<0.01, r=0.35)よりも良好であった。さらに左室充満圧≧15mmHgを求めるためのL-global SI-DIのカットオフ値を0.48とすると、感度82%、特異度68%と高感度に左室充満圧を予測することが可能であった。本結果は、米国心臓病学会(AHA2012)で発表し、Hot topicセッションに選出された。また論文として現在Circulation Journalに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、臨床データにおける研究は、ほぼ計画通りに進行している。しかし、年度途中で所属施設が異動になったこともあり、動物実験が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床データでは、Global SI-DIと左室充満圧指標の関係を示すことができた。今後は、心疾患患者における心血管イベントを合わせて考え、Global SI-DIの予後予測指標としての有用性を検討していく予定である。一方、平成25年度にはブタモデルを用いた心不全モデルを検討する予定があり、そこで合わせてSI-DIと血行動態の検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、臨床例では、まず弁膜症を含めた臨床例でGlobal SI-DIと左室充満圧の比較し、カットオフ値を求めることを目標とする。すなわり、従来の拡張能指標は、特に僧帽弁逆流や大動脈弁狭窄症などの弁膜症における限界が指摘されている。これらの疾患も含めて対象を広げ、Global SI-DIの左室充満圧の推測に有用か検討していく。続いて、予後予測指標および治療効果判定指標としてのGlobal SI-DIの有用性を検討する。前年度までの心疾患に加え、心疾患のハイリスクである糖尿病や高血圧患者も含め、Global SI-DIが将来的な心血管イベント予測に有用か検討していく。 さらに、動物実験も同時に進行し、現在拡張期3分の1ストレインを用いて計算しているSI-DIについて、さらに改善の余地が無いか検討する。
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