研究課題/領域番号 |
24500554
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大門 雅夫 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80343094)
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研究分担者 |
川田 貴之 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20532526)
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キーワード | 医用超音波 / 超音波診断 / 心不全 |
研究概要 |
本研究は、心筋ストレインを用いた新たな拡張能指標Global strain imaging diastolic index (SI-DI)の、左室拡張能評価における有用性を確立することを目的とする。我々は、収縮機能が正常な高血圧を有する拡張不全患者において、心不全の指標である血中BNP値とGlobal SI-DIが有意に相関し、Global SI-DIが拡張機能評価に有用であることを英文誌(J Echocardiogr)に報告した。そして、実際にGlobal SI-DIが左室充満圧の指標として有用であるか検討するために、心臓カテーテルを行った126例を対象に、カテーテル中に左室充満圧指標としての前心房収縮期圧(Pre-A圧)とGlobal SI-DIを同時に測定し、従来の拡張能指標と比較検討した。異なる3方向のストレインのうち、longitudinal方向のL-global SI-DIが最もよく左室充満圧と比例し、その相関は従来のE/e’よりも良好であり、L-global SI-DIがこれまでの拡張能指標より優れていた (AHA2012 Hot topicセッションに選出)。さらに、このL-global SI-DIが、血行動態の急激な変化をも評価できるか検討するために、60例を対象にニトログリセリンiv前後での比較も行った。ニトログリセリンivによるPre-A圧は有意に低下し、この変化をL-global SI-DIは従来の指標よりも鋭敏に反映し、より鋭敏な拡張能指標であることを明らかにした(Circ J 2014; 78: 419-427に発表;IF3.578)。また、同時にSI-DIが心筋虚血の評価可能であるかについても検討し、英文誌に発表した(Int Heart J 2013; 54; 266-272)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床例での検討は予定よりも研究計画が進展しており、弁膜症における心機能評価や虚血性心疾患の診断など、新たな分野への応用を検討している。一方で、施設を移動したこともあり、計画していた動物実験による基礎研究がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究では、研究チームが協力して順調に進行しており、現在の研究体制で研究を遂行している。特に、これまでの検討で、Global SI-DIが、従来の指標に比べて正確な左室充満圧指標となることや、急速な血行動態の変化をも鋭敏に反映できることを示すことができた。今後は、global SI-DIの心血管イベント予測因子としての有用性や、新たな応用に向けて検討していく予定であるが、現在の研究体制が十分可能である。一方、動物実験については進行が遅れているが、昨年異動した東京大学では動物実験施設でも恵まれた環境にあり、本年度引き続き基礎研究を進めていく予定である。 今後の予定としては、これまでglobal SI-DIを計測した拡張不全症例の前向き観察研究を行うことで、拡張不全の心血管イベント予測因子としての本指標が有用であるか明らかにする。また、これまでの研究を進める中で着想したglobal SI-DIの弁膜症や虚血性心疾患における有用性についても研究を進め、発展させていく予定である。特に、虚血心疾患については、本年度より全国16施設の多施設共同研究を予定しており、global SI-DIの有用性がより大規模研究で明らかにされることが期待されている。一方、進行が遅れている動物実験については、本年度引き続き研究を進め、本指標の基礎データを収集していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属施設が異動となったために、予定通り動物実験が進まなかった。また、臨床データ入力アルバイト雇用がスムーズに行かなかったために、余剰金が生じた。今年度は、次年度使用額を使用して、昨年予定していた研究を行う。 これまでglobal SI-DIを計測した拡張不全症例の前向き観察研究を行うことで、拡張不全の心血管イベント予測因子としての本指標が有用であるか明らかにする。また、これまでの研究を進める中で着想したglobal SI-DIの弁膜症や虚血性心疾患における有用性についても研究を進め、発展させていく予定である。特に、虚血心疾患については、本年度より全国16施設の多施設共同研究を予定しており、global SI-DIの有用性がより大規模研究で明らかにされることが期待されている。一方、進行が遅れている動物実験については、本年度引き続き研究を進め、本指標の基礎データを収集していく予定である。
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