既存のpHセンサは0.05 mm程度のガラス薄膜,ガラス電極,比較電極の二つの内部電極などが必要であるために大型であり,ビーカ内の試料全体のマクロなpHを測定している.そのため,約10-30 μmの大きさである細胞などのミクロのpHを測定するためにはμmサイズまで小型化したpHセンサが必要である. 本研究では,蚊の口並みの極細管開発で培った極細管創製技術を用いて,外径50μm以下の見かけ上1電極である「新しい微小領域pHセンサの開発」を目的とする. 今年度は外径50μm以下の「新しい極微小領域pHセンサ」の開発を目的とし,RFマグネトロンスパッタリング法を用いた極細管創製手法を用い,回転している極細銅基材上にターゲット材である電極材料を成膜することで遂行する.具体的には,直径50 μmの銅線を電解研磨により先端径を20μm程度に先鋭化し,同上にSb2O3薄膜,SiO2薄膜,Ag/AgIO3薄膜を成膜することでマイクロpHセンサの創製を行い,見かけ上1電極となるpHセンサを作製した.評価法としては,創製したpHセンサを魚卵に穿刺し,魚卵中に拡散する濃度の異なるクエン酸についてpHと電圧の関係性の確認実験を行った. その結果,見かけ上のpHセンサの外径は34.5μmに先鋭化に成功した.また,pH 6.0の魚卵にクエン酸を浸漬させて徐々に卵内のpHを変化させた魚卵(pH 5.2,pH 4.6)に穿刺してpHを測定した結果,pHと電圧の関係に線形性を確認した.それ故,極微小領域にてpHを連続的に測定可能であるpHセンサの創製に成功した.
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