研究課題/領域番号 |
24500559
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
中岡 一敏 鶴見大学, 歯学部, 助教 (50298262)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有限要素法 / 4次元咀嚼筋解析 / 咀嚼筋腱・腱膜過形成症 |
研究概要 |
下顎が著しく張り出した顔貌と無痛性開口障害を特徴とする咀嚼筋腱・腱膜過形成症に対して、医用工学技術を応用した咀嚼筋の病態モデルを構築するとともに術前後のデータ解析から病態解明を試みてきた。その結果、主原因の咀嚼筋の同定とこれに従った外科療法により、開口制限は著明に改善され、良好な治療結果が得られてきた。ところで、顎運動により顎顔面に生じる応力状態と顎骨形態には相関があると言われ、咀嚼筋腱・腱膜過形成症患者における特異な下顎運動により顎骨に作用する筋の牽引力の他、持続的な咬合力、下顎頭反力などの力学状態は、特徴的な下顎骨形態の形成に大きな影響を与えていると考えられる。そこで今回は、本疾患患者のCTデータから個体別の有限要素モデルを作成し、さらに患者の下顎運動データを統合することで、適切な力学条件が設定された有限要素モデルにおいて下顎骨体に生じる応力状態を探り、応力メカニズムと病態成因について言及する。 本研究初年度は、咀嚼筋腱・腱膜過形成症患者8名とコントロールである健常者2名の個体別3次元モデルと咀嚼筋モデルの構築まで終了した。また,本研究で使用予定の有限要素解析ソフトウエアは現在開発中である。今後、有限要素解析ソフトウエアを用いた個体別の有限要素モデル作成と解析を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、健常者2名と咀嚼筋腱・腱膜過形成症患者8名における4次元解析システムの適用まで行うことができた。 歯科用Cone beam CT (PSR9000N(朝日レントゲン工業社製))から取得された3次元画像情報から咀嚼筋群3次元再構築モデルを製作した。撮影条件としては、matrix size 512 X 512 pixel、FOV φ41 mm X 40 mm(hight)円柱状、 pixel size 0.1 mm、スライス間隔は0.1 mmとし、モデリングソフトウエア(Amira)を用いて個体別の3次元再構築画像を作成し、これに筋モデルを設定した。さらに、光学式顎運動測定装置MM-J2(松風)を用いて、基本顎運動(最大開口,側方滑走運動,矢状面内・前頭面内限界運動,習慣性開閉口運動)の計測を行った。形態情報との統合のために形態座標の測定も同時に行い、咀嚼筋群3次元再構築モデルと6自由度下顎運動データとの座標統合を行うことで、下顎の運動にあわせて筋モデルが2次的に挙動する4次元咀嚼筋モデルを構築した。製作した四次元咀嚼筋モデルの各種筋の各パーツが挙動する様子を仮想空間内で表現し、その挙動についてグラフ表示を行うことから定量的な評価を行った。また,顎運動時の下顎に伝達する応力分布を,有限要素法 (Finite Element Method,FEM) を用いて解析を行う基盤ソフトウェアの開発を行った.特に,運動データやモデルデータの入出力機構の設計・実装,さらには,FEMメッシュへの変換ツールの構築やFEM解析ツールの基礎検討を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は、取得された3次元画像情報から、3次元有限要素モデルの構築と有限要素解析を進める。有限要素モデルの作成と解析は、現在開発を行っている有限要素解析ソフトウエアを用いる。 各モデルは自動要素分割により要素分割を行い、構成要素となる歯、皮質骨、海綿骨の材料定数は線形静解析で用いるヤング率およびポアソン比の一般的数値を入力する。咬合時の拘束条件としては、左右の顎関節を拘束点として設定する。荷重条件としては感圧シート(Dental prescale)から歯列に生じる荷重と咬合接触部位を測定し、有限要素モデルに負荷をかける。これと同時に、側頭筋、咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋の牽引方向を4次元咀嚼筋解析システムから決定し、筋による負荷も有限要素モデルに設定する。一方、開口時の拘束条件としては、伸展率が低い側頭筋、左右顎関節を拘束点として設定し,荷重条件は、4次元咀嚼筋解析システムにより荷重量、荷重方向を算出し、伸展する咬筋、内側翼突筋、外側翼突筋を対象として設定する。それぞれの応力状態としては、各要素において最大主応力、最小主応力、von Mises応力を算出し、三次元モデルに応力分布を表示させる。 上記手法を応用することで、各種咀嚼筋の動作異常、下顎骨への応力解析結果について検証する。 データー解析、評価より得られた診断、治療方針に従い実際に手術を施行する。術前後の解析結果と術後の治療効果判定、患者と健常者との比較検討により、本疾患の成因、病態について言及する。ソフトウエアについては前年度の基礎検討の結果を基運動データを可視化し,解析していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度は、研究で必要な設備備品や有限要素解析ソフトの開発を進めてきた。初年度の残金は、この開発費用に充当される予定である。 次年度からは、開発したソフトウエアを用いたデータ解析と検討、そしてその成果発表が中心となるため、消耗品や学会出席費用が主な使用内訳となる。 平成25年度に予想される研究経費内訳は、消耗品費、国内外の学会出席のための旅費、印刷費用、論文投稿費用を想定している。
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