研究課題/領域番号 |
24500561
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
渡辺 好章 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60148377)
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研究分担者 |
秋山 いわき 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80192912)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロバブル / 非線形振動 / 和音・差音成分 / 2周波数送波 / 音響放射力 / 血流模擬ファントム / 音圧依存性 |
研究概要 |
本研究は、平成24~26年度の3年間で生体内部の血流の3次元速度ベクトルを実時間で測定する手法を確立して,その測定精度を血流模擬ファントムによって確認し,本手法の臨床診断への適用可能性を検討することを目的としている。本手法は2つの超音波ビームが交差する領域において、静注された微小気泡(造影剤)の非線形振動により発生する和音・差音成分と基本波成分を用いることによって、3次元速度ベクトルの2つの方向余弦成分を測定する点を特徴としている。平成24年度では、本手法の測定原理を実証するために,超音波振動子,超音波送受信系,基本的な信号処理アルゴリズムを開発して,血流模擬ファントムによる流速測定実験システムを構築した。本研究では、静脈注射されたマイクロバブルの非線形振動を利用して、血流速度の3次元ベクトルを測定するため、マイロバブルの速度と血流速度が一致しない場合は、血流速度測定が困難となる。そこで、流路にマイクロバブルを流し、直角に交わる2つの超音波ビームの交差領域からの反射波を取得し、その和音成分のドプラ周波数を測定した。実験においては、周波数3.2MHzと2.0MHzの超音波を送波し、和音である5.2MHz成分のドプラ周波数を計測した。流速とドプラ周波数の関係を調査したところ、超音波の音圧に依存する傾向を観測した。そこで、音圧を20kPaから140kPaまで変化させたところ、20から60kPaまでは音響放射力によるとみられる効果が観測された。これは超音波の音響放射力によりマイクロバブルが移動したためであると考えられる。このデータを音圧0に外挿したところ、流速とドプラ周波数の理論値と一致した。したがって、測定されたマイクロバブルの移動速度から血流速度を推定するためには音響放射力による効果を考慮する必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度に実施した実験によって、測定されたマイクロバブルの移動速度から血流速度を推定するためには音響放射力による効果を考慮する必要があることが明らかとなった。 そこで、流路にマイクロバブルを流し、直角に交わる2つの超音波ビームの交差領域からの反射波を取得し、その和音成分のドプラ周波数を測定した。送波する超音波の音圧を変化させて流速とドプラ周波数の関係を調査したところ、超音波の音圧に依存する結果となった。これは超音波の音響放射力によりマイクロバブル群が流速と異なる速度で移動していることを示している。本研究では、流速測定を目的としているため、マイクロバブル群の受けている音響放射力を推定して測定値を補正する必要がある。音響放射力は音圧に依存するため、音圧を変化させて2回ドプラ周波数を測定し、その結果から流速を推定することが可能である。また、遅い流速の場合は、音響放射力の影響により流速測定値の精度は低下するが、速い流速の場合は相対的に影響が抑えられ精度の低下は小さいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
超音波の音響放射力によるマイクロバブルの速度変化が明らかとなったので、流速速度ベクトルを測定するためには、これを補正する必要がある。そこで、音圧依存性を補正するために、音圧を変化させて2回ドプラ周波数を測定し、その結果から流速を推定する。また、遅い流速の場合は、音響放射力の影響により流速測定値の精度は低下するが、速い流速の場合は相対的に影響が抑えられ精度の低下は小さい。そこで、流速と測定精度との関係を調査して測定対象とする流速範囲を決定する。次に、3次元ベクトル計測を実現する実験システムを構築して、流路ファントムの流速分布を測定する。2つの超音波ビームが交差する領域において、静注された微小気泡(造影剤)の非線形振動により発生する和音・差音成分と基本波成分を用いることによって、3次元速度ベクトルの2つの方向余弦成分を測定する。1つの超音波プローブで送受されたエコー信号におけるレンジゲートの位置によって測定領域が特定される。つまり、他の2つの超音波プローブでからブロードビームを形成させれば、これらのビームを制御する必要がない。また、2つのビーム交差は和周波数成分の有無で確認できるので、造影剤がマーカとして機能することになる。一方、3次元速度ベクトルを決定するためには、もうひとつの方向余弦成分が必要である。そこで,直交して配置した、2つの超音波プローブから交互に超音波パルスを繰り返し送波すると、2つの方向余弦成分が交互に測定されることになる。すなわち,ひとつの超音波プローブによるエコー信号のみから,3つの方向余弦成分が得られるため,従来の測定上の問題点が解決されることになる。市販の造影剤(ソナゾイド)を用いて実験を行い,本手法で測定可能な流速範囲,測定精度,分解能を明らかにする。シリコンチューブ内を流速1cm/s~1m/sの定常流および疑似拍動流で循環して実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費 150万円 3次元ベクトル測定用の振動子を試作する。振動子は、送受兼用振動子1個、和音生成用送波振動子2個必要であり、計20万円×3=60万円計上する。マイクロバブルとして臨床で用いられているソナゾイドを用いる1.5万円×20バイアル=30万円。実験システム制御用コンピュータ1台 20万円 血流模擬ファントム40万円 旅費 国内学会発表用として30万円計上する。 謝金 実験補助として10万円計上する。 その他 会議費として10万円計上する。
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