研究課題/領域番号 |
24500565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
上村 和紀 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10344350)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心不全 / 左心房圧 / 僧帽弁輪速度 / 三尖弁輪速度 / 肺動脈楔入圧 / 頚静脈圧 |
研究概要 |
心疾患患者において、低侵襲・正確・実時間で左心房圧値を推定しモニターするシステムを開発することが本研究計画の目的である。 平成24年度はモニターシステムの中核をなす低侵襲な左心房圧推定方法を開発した。 臨床において左心房圧値は肺動脈カテーテルを用い肺動脈楔入圧(PCWP)として計測される。PCWPを反映するという前提で頸静脈圧(JVP)が用いられることもあるが、患者によって両者は必ずしも相関していない。我々は、JVPを左右心機能のバランスで補正すれば、PCWPを正確に予測できると仮説した。この仮説に基づき、PCWPをJVPと、心臓エコーにて計測される収縮期最大三尖弁輪速度(ST)と僧帽弁輪速度(SM)の比(ST/SM)で予測する方法を開発、検証した。10頭の麻酔閉胸犬にて、経胸壁心臓エコー心筋組織ドップラー法によりST/SMを計測した。左冠動脈塞栓により作成した左心不全状態、肺動脈塞栓により作成した右心不全状態において、計158セットのJVP(0-19mmHg)、PCWP(2-40mmHg)、ST/SM(0.5-2.8)を得た。PCWPはJVP×ST/SMと有意で強い相関を認めた(JVP×ST/SM=0.7PCWP-1, R2=0.89,p<0.001)。PCWP>18mmHgであることを予測する受信者作動特性(ROC)解析では、カットオフJVP×ST/SM>11mmHgの感度は90%、特異度は90%と良好であった。JVP×ST/SMのROC曲線下面積は0.94であり、PCWP>18mmHgであることを予測する指標として有用であることが示された。JVPを左右心機能のバランスで補正した指標、JVP×ST/SMは、PCWPを正確に予測した。 今回開発した方法によりPCWPすなわち左心房圧値を正確に推定でき、心不全患者管理にきわめて有用と期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施計画では、低侵襲な左心房圧推定方法の開発、および動物実験による検証が目的であった。研究実績概要に記載したように、頚静脈圧と心臓エコーにより計測される三尖弁輪と僧帽弁輪速度の比から低侵襲に左心房圧(肺動脈楔入圧)を推定する方法を開発し、その推定精度を実験で検証した。推定精度は臨床的に十分満足いくものであった。以上より、当該年度までの達成度はきわめて順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度に開発した推定法を用い、連続左心房圧値モニターを開発する。申請者が開発してきた低侵襲心拍出量モニター(Uemura K et al. A minimally invasive monitoring system of cardiac output using aortic flow velocity and peripheral arterial pressure profile. Anesth Analg. 2013;116:1006-17. )は、大動脈連続波ドップラー流速信号・末梢動脈圧信号を4-8秒ごとに解析用コンピュータでADサンプリングし、波形解析し心拍出量値を出力する。心拍出量値は4-8秒ごとに更新され実効的には連続・実時間で、対照心拍出量値を時間遅れなく追尾する。このコンピュータプログラムを発展させ、左心房圧値連続モニターを開発する。モニター検証のための動物実験(犬10頭)・データ解析は平成24年度と同様に行う。また今回開発した推定方法が実際の患者において高い精度で左心房圧値を推定できるかを、心不全患者において検証する臨床研究も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額28,398円は、当初国内学会出張に使用する予定であったが、当初予定より出張に使用した費用が安く抑えられたために生じた。平成25年度には複数回の国内外出張を予定しており当初予定より費用が高くなる可能性もある。国内外の学会出張に使用する計画である。
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