研究課題/領域番号 |
24500565
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
上村 和紀 独立行政法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10344350)
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キーワード | 心不全 / 左心房圧 / 肺動脈楔入圧 / 心臓超音波 / 末梢静脈圧 |
研究概要 |
左心房圧モニターシステムの中核をなす低侵襲な左心房圧推定方法開発をさらに発展させた。また開発した左心房圧推定方法が臨床症例に適用できるか検討した。 臨床において左心房圧値は肺動脈楔入圧(PCWP)として計測される。我々は、頸静脈圧(JVP)を左右心機能のバランスで補正すれば、PCWPを正確に予測できると仮説した。この仮説に基づき、PCWPをJVPと、心臓エコーにて計測される収縮期最大三尖弁輪速度(ST)と僧帽弁輪速度(SM)の比(ST/SM)で予測する方法を開発、前年度にその推定精度を心不全犬において確認した。JVPは中心静脈圧であり、計測には侵襲的な手技が必要とされる。末梢静脈圧(PVP)は、簡便に、低侵襲に計測できる。よってJVPの代わりにPVPを用いてPCWPが推定できるかを検討した。13頭の麻酔犬にて、経胸壁心臓エコーによりST、SM、拡張早期僧帽弁流入速度と僧帽弁輪速度の比(E/Ea)を計測した。正常心機能状態、およびさまざまな病態の心不全状態において、前負荷を輸液・脱血により大きく変化させた。計195セットのPCWP(1.8 to 40.0 mmHg)、PVP×ST/SM、E/Eaを得た。PVP×ST/SMとPCWPは強く相関し、その決定係数(R2=0.59)は、E/EaとPCWPの間に認められた決定係数(R2=0.18)より有意に大きかった(P<0.01)。PCWP>22mmHgであることを予測するROC解析では、カットオフPVP×ST/SM>11.5mmHgの感度は72%、特異度は79%と良好であった。低侵襲PCWP予測法は、JVPの代わりにPVPを用いても高い精度でPCWPを予測できた。 国立循環器病研究センター心臓内科患者において、低侵襲PCWP予測法を適用、データ採取は安全に行えた。 今回開発した方法は心不全患者管理にきわめて有用と期待された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実施計画では、低侵襲な左心房圧推定方法を用いた連続モニターの開発とその動物実験による検証、臨床症例において左心房推定方法が安全に適用できるかを検証することが目的であった。ただ、低侵襲モニターの臨床応用のためには推定法のさらなる低侵襲化が必要不可欠であった。平成25年度に確立した、末梢静脈圧を用いる低侵襲な方法の推定精度は臨床的にみても十分満足いくものであった。また左心房圧推定方法の臨床適用性・安全性も確認できた。以上より、当該年度までの達成度は、おおむね順調に進展しているといえた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成24・25年度に開発した推定法を用い、連続左心房圧値モニターを開発する。申請者が開発してきた低侵襲心拍出量モニターのコンピュータプログラムを発展させ、左心房圧値連続モニターを開発する。モニター検証のための動物実験(犬10頭)・データ解析は平成24・25年度と同様に行う。またこのようにして開発した低侵襲心拍出量モニターと左心房圧モニターを、従来から開発してきた血行動態制御システムに組み込む。犬心不全モデルにおいて、この制御システムの有効性を検証する。血行動態制御システムの検証のための動物実験(犬10頭)・データ解析も平成24・25年度と同様に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額125,203円は、当初国内学会出張に使用する予定であったが、当初予定より出張に使用した費用が安く抑えられたために生じた。 平成26年度には複数回の国内外出張を予定しており当初予定より費用が高くなる可能性もある。国内外の学会出張に使用する計画である。
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