研究課題
前年度までに、低侵襲な左心房圧推定法(肺動脈楔入圧:PCWP)の理論を確立し、その理論の妥当性と推定法の有用性を犬の心不全モデルを用い実証した(Uemura et al. Heart Vessels 2014 in press)。本年度はまず実臨床心不全症例においてこの推定法の有用性を検証し、無侵襲な推定法を確立した。国立循環器病研究センター心臓内科に入院した心不全98症例において肺動脈カテーテル検査と心臓エコードプラー検査を同時施行した。右心房圧(RAP)は、PCWPと正相関していたが、RAPを心筋組織ドプラーエコー検査により計測される三尖弁輪と僧帽弁輪の収縮期速度の比(ST/SM)で補正した指標:RAP*ST/SMは、PCWPとより強固に相関していた。また、RAPの無侵襲な代替指標として心臓エコー検査により計測される下大静脈径(IVCD)を用いると、IVCD*ST/SMもPCWPと強固な相関を認めた。IVCD*ST/SMはPCWP>18mmHgを高い感度90%、特異度77%で予測しえた。このように、今回開発した推定法の臨床における有用性を確かめた(Chinen et al. Circulation. 2014; 130: A12904.)。低侵襲左心房圧推定法と、近年開発した低侵襲心拍出量モニターを、従来開発してきた循環管理システムに組み込み、閉胸麻酔犬の心不全モデル(9頭)において、すぐにでも臨床応用可能な環境設定で循環制御することに成功した。時間0分に起動されたシステムは強心剤・血管拡張剤・利尿剤の投与量を自動制御し、左心機能・血管抵抗・循環血液量を正常値目標値へ改善させ、約30分で動脈圧・心拍出量・左心房圧を正常目標値へと正確に改善させた(Uemura et al. ESC Congress 2015)。このように計画していた研究開発の目的は予定通り達成した。
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