研究課題
加齢によるバランス能力の低下は高齢者の転倒リスクを高め,転倒は寝たきり状態を引き起こす.高齢者のバランス能力の特徴に姿勢および運動制御の不安定性があり,高齢者の運動パフォーマンスを低下させる.また,この姿勢や運動制御の不安定性は運動学習に負の影響を与え,高齢者の転倒予防プログラムの効果に影響を与える.本研究では,高齢者の転倒予防の運動プログラムの有効性向上を目指し,加齢による立位姿勢・運動制御の不安定化メカニズムを明らかにすることを目標に立位での追跡運動課題を用いて研究を進め,以下に列挙する研究成果を得た.(1)立位バランスにおいて,運動学に関するフィードバック情報は一般的に有効である.視覚的フィードバック情報を用いて動作の安定性がプラトーに達した後,若年者は制限されたフィードバック情報下でも動作を安定させることが可能であったが,高齢者では僅かなフィードバック情報の制限で動作の安定化に影響を受けていた.(2)立位姿勢を制御するために姿勢筋や抗重力筋の共同性は不可欠である.立位姿勢制御時の若年者の筋シナジーは運動方向に対応して構成されるが,高齢者の筋活動は若年者で観察された筋シナジーと異なる.特に,下肢二関節筋群の立位姿勢制御への関与は若年者に比べて高齢者で増大する.(3)高齢者のバランス能力を低下させる要因に運動の開始の遅れ(つまり,反応時間の延長)が特徴的であるが,姿勢を安定させるための様々な代償運動が行われ,運動の開始と停止が繰り返される.運動制動課題において,高齢者では若年者に比べて運動開始の遅れとともに運動停止までに要する時間が延長し,大きな変動性を持つ.(4)さらに,後方への姿勢および運動を修正する時,若年者に比べて高齢者は重心を下方に移動させていた.高齢者は垂直方向への姿勢制御,つまり,第3の姿勢戦略である膝関節を中心とした懸垂戦略を代償的に用いる可能性がある.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) 備考 (2件)
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