研究実績の概要 |
本研究課題では、平成23年度から前向きコホート研究を計画・遂行し、二次性の変形性股関節症(以下、股関節症)のレントゲン画像における疾患進行(関節裂隙の狭小化)に影響を与える要因を探索した。 初年度には、整形外科医師による診断に加えて、股関節の骨形態(レントゲン画像)、股関節痛、股関節可動域・筋力、歩行解析(歩行時股関節角度やモーメント)、日常生活における活動量などを測定し、経年的なレントゲン画像上の変化を評価した。 12か月間におけるレントゲン画像変化から、50名の患者が進行有り群と進行なし群とに分けられた。進行の有無を従属変数として上記の初年度測定要因独立変数としてを多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ、過剰な歩行時の股関節負荷(特に前額面)が股関節症進行に影響を与えることが明らかとなった(オッズ比 1.23, P = 0.038)。この結果は、年齢や体重、初年度における関節裂隙幅で調整してもなお有意であった(オッズ比 1.34, P = 0.013)。 現在まで、股関節症の進行に関するリスクファクターは、年齢や性別、遺伝子型など運動療法などにより変化させることが不可能な要因のみ特定されていたが、本研究は、運動療法など保存的介入により変化しうる要因の中から初めて疾患進行のリスクファクターを明らかにしたものである。本研究結果をもとにして、今後、新たな介入研究などが行われ疾患進行予防に関する新たな介入方法のエビデンスが蓄積されることが期待される。また、前向きコホート研究は継続しており、今後さらに長期間における疾患進行に関するリスクファクターが明らかになると思われる。
|