研究課題/領域番号 |
24500581
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
澤井 元 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20202103)
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研究分担者 |
八木 哲也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50183976)
三好 智満 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70314309)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 人工視覚 / 電気刺激 / パルス間隔 / 網膜 / 視覚皮質 |
研究概要 |
一般的に人工視覚システムでは固定間隔の電気刺激パルス列が使われる。しかし、動物実験でもヒトの臨床試験でも、同一の電極で電気刺激パルス列を連続して与えると、次第に応答の閾値が上昇し、視覚中枢の反応や疑似光覚が減弱するという問題が生じている。この問題点は、刺激パルス間隔に不規則な変動、すなわち「ゆらぎ」を導入することによって解消される可能性がある。そこで、本研究の目的は、反復電気刺激の過程で視覚応答を低下させない「ゆらぎ」刺激パターンを動物での電気生理学的実験・光学計測実験とヒトでの心理物理学的実験により検討し、そのパターンを人工視覚システム上で発生させる回路を開発・製作することを到達目標とする。平成24年度は、まず、「ゆらぎ」導入効果を確認するための実験系確立とを行った。具体的には、固定間隔のパルス列刺激と変動間隔のパルス列刺激のどちらが、視覚中枢上でより強い神経応答を示すのかを以下の実験により検討した。 麻酔したラットの眼球に人工網膜用刺激電極(強膜上関電極と硝子体内参照電極)を設置し、11発の双極性定電流パルス(パルス幅0.5 ms、電流値0.1-0.5 mA)を固定間隔50 msでパルス列として網膜に与えた(f=20 Hz、刺激時間500 ms)。その眼球と反対側の皮質視覚野より、刺激に対する視覚野ニューロンの放電応答を記録した。一方、2-10番目のパルス間隔を25ms, 50ms, 75msの各3回ずつランダムに配した刺激系列(平均f=20 Hz、1/f0揺らぎ刺激)をゆらぎ刺激として網膜刺激を行った結果、視覚野ニューロンの放電応答が固定間隔刺激に対する応答よりも高いことを示唆する実験結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた電気生理学実験と光学計測実験を実施できたが、光学計測実験では固定間隔刺激と不規則間隔刺激の間に有意な差が認められず、電気生理学実験の結果と一致していない。その理由としては、実験回数が少ないことと光学計測の感度が低いことが考えられ、追加実験および実験方法の改良が必要であるから。
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今後の研究の推進方策 |
1.「ゆらぎ」導入効果の確認:初年度に引き続き、最も強い応答を持続させる刺激パルス列を動物実験で検討する。 2.最適ゆらぎの同定: 1/f0ゆらぎ刺激では異なるパルス間隔(= 周波数fの逆数)の出現確率が同じである。しかし、自然界に見られるのは、全く均等でランダムな変動ではなく、高い周波数ほど出現確率が低くなる1/fゆらぎや1/f2ゆらぎ(ブラウン様の変動)である。そこで、パルス間隔に比例、または、その2乗に比例して出現確率が変動するパルス列を作製し、それぞれ、1/fゆらぎ刺激と1/f2ゆらぎ刺激としてラット網膜に与え、視覚中枢の応答を上記の実験IとIIの方法で記録する。そして、最も強く広範な応答を誘発するゆらぎ刺激を決定する。 3.刺激回路の製作:動物実験の結果をもとに、最も効果的な「ゆらぎ刺激」を発生する半導体集積回路を製作する。具体的には、ゆらぎ系列のライブラリを作製し、ハードウェア記述言語Verilog HDLを用いてネットリスト化し、プログラマブルロジックデバイス(FPGA)に転送する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めて行く上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更は無く、前年度の研究費も含めて当初に予定した計画を進めていく。
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