研究課題/領域番号 |
24500588
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
見上 昌睦 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30279591)
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キーワード | 吃音児 / 指導 / 支援 / 吃音重症度 / 通級による指導 / 音読 / セルフヘルプグループ / 連携 |
研究概要 |
吃音児の実態やニーズに即した指導及び支援法について検討するために、事例研究と調査研究を行った。 1.事例研究 【対象児】(1)吃音の進展した学齢児:発吃2~4歳代、初診(指導開始)時に8~11歳代の5例(吃音重症度評定尺度で重症度5~7、3例に間接法による受療経験あり)。(2)読みの問題のある吃音児:吃音を主訴とし、初診時に7~8歳代の3例。言語障害通級指導教室において指導が行われた。音読時に吃音症状と共に誤読が多くみられた。WISC-IIIによるFIQは85~109、IQや群指数間に3例共に有意差がみられたが、LDや発達性読み書き障害の診断基準は満たさなかった。【指導方法】(1)柔らかな起声・声でゆっくりと母音部をひき伸ばし気味に発話(音読を含む)。後3例の読みの問題に対して、音読では主に文節ごとに意味のまとまりを意識させるよう指導、(3)カウンセリング的対応、(4)児童中心遊戯療法、(5)親面接(環境調整)。【経過】指導開始後、全8例において吃音症状は軽快(前5例の吃音重症度は0~4に軽快)。前5例の行動・心理面は好転、後3例の誤読も軽減。【考察】吃音の進展した学齢児に対し、関連した問題に留意しながら、直接的言語指導を核とし、多面的に指導・支援していくことの効果が示唆された。 2.調査研究 吃音者のセルフヘルプグループ(SSHG)と言語障害通級指導教室担当教師、言語聴覚士との連携による吃音児と保護者に対する支援のあり方について検討を行った。指導担当者67名、SSHG会員を中心とする成人吃音者91名への質問紙調査の結果から、SSHGの活動について、主に情報提供の面で吃音児支援に貢献できると思われた。SSHG会員の吃音児支援への意欲の程度については、「ある(46.2%)」「少しある(30.8%)」で、意欲の高さが示され、会員の多様な背景や経験が支援に生かされると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吃音児の実態やニーズに即した指導及び支援法について検討し、個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成に生かすために、事例研究と調査研究を推進している。 事例研究については、主に吃音の進展した子どもを対象に、合併症(構音障害、知的障害、読みの問題など)のある子どもも含めて指導及び支援を継続中であり、一部を論文、学会発表(国際学会を含む)、図書(共著)において発表している。 調査研究については、吃音者のセルフヘルプグループと言語障害通級指導教室等との連携による吃音児支援のあり方、吃音者の吃音の公表(公表に伴う心理的変化や、公表の際に聞き手に求める態度等)などについて質問紙調査を実施し検討を進め、一部を学会発表している。
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今後の研究の推進方策 |
事例研究については、福岡教育大学教育総合研究所附属特別支援教育センターを中心に、吃音児(合併症のある子どもを含む)の臨床指導を継続して推進する。指導前後のコミュニケーション態度の変容についても検討する。成果の一部を学会発表及び論文に整理する。 調査研究については、吃音者のセルフヘルプグループの協力も得ながら継続して推進する。成果の一部を学会発表及び論文に整理する。 国際学会における発表も予定しており、情報収集や研究上の示唆も得ながら推進する。 吃音児者に対する直接的言語指導に焦点を当てた指導方法に関する国内外の研究の整理も行う。さらに、大学の教員養成課程における吃音に関するカリキュラムについても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度、成果発表(情報収集を含む)として国際音声言語医学会に参加したが、当初の計画よりも旅費がかからなかった。さらに、物品費等の支出が少なく、人件費・謝金を使用しなかった結果、次年度使用額が生じた。 次年度使用計画については、「物品費」として、データ保存用ディスク、発達・心理検査用紙・教具、パソコン関係備品・ソフトウェアなどを考えている。音声分析・音声解析システムの導入についても検討する。「旅費」として、成果発表(情報収集を含む)については、国内学会に加え、オックスフォード非流暢性学会への参加を考えている。「謝金」として、資料整理を考えている。「その他」として、学会参加費、翻訳料、論文別刷料、通信運搬費、複写費などを考えている。
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