吃音児者の実態やニーズに即した指導及び支援法について検討するために、事例研究と調査研究を行った。 1.事例研究 【対象者】(1)吃音の進展した幼児:発吃2~4歳、初診時年齢2歳4ヵ月~5歳7ヵ月の10例(吃音重症度評定尺度で重症度3~7)。(2)語想起に課題(発話時に不自然な間)のある吃音児:吃音を主訴とし、初診時に小学校2年と5年の児童2例。言語障害通級指導教室において指導が行われた。音読時に吃音症状と共に誤読が多くみられた。WISC-ⅢによるFIQは各80、79、吃音重症度は各4、3。(3)日本に留学中の母語が中国語で日本語を習得中の吃音のある20歳代の中国人留学生2例。【指導方法】(1)柔らかな起声・声でゆっくりと母音部をひき伸ばし気味に発話(幼児にはカメの玩具を動かしながら、留学生には日本語と中国語の両言語で実施)。(2)児童の語想起の課題に対して、言語発達、聴覚的把持力、他者感情の理解等を考慮した指導。(3)カウンセリング的対応、幼児・児童に対して(4)児童中心遊戯療法と(5)親面接(環境調整)。【経過】指導開始後、全例において吃音症状は軽快(幼児6例は治癒)。児童・留学生の行動・心理面は好転、児童の不自然な間は減少。【考察】吃音の進展した幼児、合併症のある児童、留学生に対し、直接的言語(発話)指導を核とし、個々の課題を考慮しながら多面的に指導・支援していくことの効果が示唆された。 2.調査研究 吃音者の吃音の軽減を考慮した自己調整(話し方の工夫や準備等)のあり方について10歳代~60歳代の120名を対象に質問紙調査により検討を行った。「言いやすいことばを使って話す」「ゆっくり話す」「柔らかく話す」等で特に「話しやすい」傾向にあった。吃音者セルフヘルプグループ非会員や若年齢者で「吃音軽減のための工夫・対策」の使用率が低く、特に吃音重度者への情報提供の大切さが示唆された。
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