研究課題
認知症の行動・心理症状(BPSD)の評価表は既存のものがいくつか見られるが,その多くは薬剤の効果判定のためにつくられており,実際の介護場面では使いづらい面がある.そこで,本研究ではBPSDの幅広い項目を評価することにより対象者の状態像を把握でき,リハビリテーションやケアなどによる対象者の変化を捉え,介入の効果判定に利用できるBPSDの評価尺度を目的とした.平成24年度には高齢者介護施設職員を対象に,介護場面で実際にみられるBPSDについての調査を行なった.調査表は既存のBPSD評価尺度,ならびに認知症の評価尺度のBPSD関連項目から228のBPSD項目(行動症状122項目,心理症状106項目)を作成し,高齢者施設職員が実際に介護業務に従事するにあたり,項目にあるような症状がみられるかどうか,その頻度と重症度を尋ねた.その結果,頻度,強度ともに心理症状よりも行動症状の方が有意に高い結果となった.平成25年度はこの調査結果を国際学会にて報告し,評価尺度の作成に着手した.平成26年度は評価尺度を作成し,認知症高齢者に携わる作業療法士に意見を聴取し,修正をおこなった.また実際に認知症高齢者を対象に評価を行なったが,十分な対象者数を確保できず,補助事業期間の延長申請を行なった.平成27年度は上記調査結果を認知症ケア学会にて報告を行なったが,その際に「心理症状が原因となっている行動症状もあるため,心理症状の評価も重要である」との指摘を受けた.また,対象者の否定的な側面だけを評価するのではなく,肯定的な側面も評価し,認知症のケアで用いられる考え方である「パーソンセンタードケア」の視点を取り入れるべきとの指摘を受けた.そこで,評価尺度の大幅な修正を行なった.
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
International Journal of Gerontology
巻: 9 ページ: 161-165
10.1016/j.ijge.2015.04.001