研究課題/領域番号 |
24500596
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山形県立保健医療大学 |
研究代表者 |
神先 秀人 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (10381352)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 足部ロッカー機構 / 歩行分析 / 運動力学的分析 / 衝撃吸収 |
研究概要 |
歩行中の荷重側足部においては,踵を中心とした足部の前方回転(ヒールロッカー),足関節を中心とした下腿の前方移動(アンクルロッカー)および前足部を中心として踵を持ち上げる運動(フォアフットロッカー)の3つの回転運動がみられる.本研究の目的は,各ロッカー機構の生体力学的な役割を明らかにするとともに,運動学,運動力学,筋電図学的特性に関する新たな知見を探ることである. 平成24年度は,ヒールロッカーとアンクルロッカーに関する検討を行うために,足部に種々の制限を加えた条件歩行を行わせ,制限の無い条件での歩行と比較した.ヒールロッカーは,足関節の底屈に制限を加える(90度底屈制動)ことで,アンクルロッカーは,足背屈に制限を加える(90度背屈制動)ことで,その変化から働きを検討した.これまで,10名の健常男性を対象として,上記の条件に加え,裸足,装具装着で制限なしおよび90度固定位の合計5条件での歩行を行い,3次元データ,床反力データならびに下肢の筋活動データを収集した.歩行速度は,背屈制限および固定時に,無制限時と比較して有意な減少を示した.底屈制限時には立脚期の同側膝屈曲角度の増加傾向,対側足最大背屈モーメントの増加と底屈モーメントの減少などがみられ,対側下肢による代償が考えられた.背屈制限時には,立脚期における同側膝関節屈曲角度および伸展モーメントの減少,膝屈筋群の筋活動の増大,および立脚期の底屈モーメントの減少がみられた.このことは,背屈を制限することで,膝の伸展が促され,その伸展を制御するために膝屈筋群が活動するともに底屈筋の遠心収縮による下腿の前方への回転運動を制御する必要性がなくことなどが考えられた.しかし,立脚期における膝屈曲の減少は衝撃吸収にとって負の効果をもたらす可能性がある.今後,解析を進め,衝撃吸収や機械的効率性におけるロッカー機構の役割を検討していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で使用する測定機器の選択や装具の考案ならびに作成において決断に至るまでに多くの時間を要し,そのため倫理委員会への申請手続きが遅れた.実験自体は,平成24年度の予定をほぼ終了したが,データ解析に多大な時間を要するため当初の目的が達成できていない.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に予定していた検討項目のうち, 足部ロッカー機構が制限を受けた条件下における足底面各部位の足圧の変化を測定する課題が残存しているため,優先的に行いたい.当初の予定では,3次元計測,筋電計測と同期させて行うことを考えていたが,3次元計測用のマーカーや電極に加えて,無線の送信器等を身体に付帯させることは,負荷が大きく,自然な歩行の妨げにもなる可能性があるため,別の試行として実施することを考えている.ビデオ画像を同期することで,足圧分布測定中の歩行状態に関する視覚的情報なども得られるものと考えている. また,当初より予定していた,平成25年度の主な課題である,フォアフットロッカーについての研究は予定通り行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に購入した圧力分布測定装置が非常に高額であり,かつ選定・購入時期が遅れたため,当初計画していた本研究で使用するための歩行補助装具の購入や筋電図用電極,3次元計測用マーカーなどの消耗品費に科学研究費を当てることができなかった.実質的には,昨年度に交付を受けた補助金を超える額を本研究に支出している.平成25年度は,当初の予定通り,実験で使用する消耗品や,謝金,国内学会への旅費に使用する予定である.平成24年度より繰り越した研究費は,歩行分析実験後の解析作業に多大な時間を要するため,その解析補助ならびに連携研究者の旅費に使用したい.平成25年度の研究費使用予定は以下の通りである. 物品費 (300千円) 歩行試験用インソール,筋電電極,動作解析用マーカーセット 人件・謝金(166千円) 研究協力費(被験者),実験・解析補助など 旅費 (200千円) 国内学会2名,その他(20千円)学会参加費2名分など
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