研究課題/領域番号 |
24500596
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研究機関 | 山形県立保健医療大学 |
研究代表者 |
神先 秀人 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (10381352)
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キーワード | 足部ロッカー機構 / 歩行分析 / 運動力学 / 重心移動 |
研究概要 |
本研究の目的は,歩行中に認められる,踵,足関節,前足部を中心とした3つの回転運動(ロッカー)の生体力学的役割を明らかにすることである.平成25年度は,前足部を中心として踵を持ち上げる運動(フォアフットロッカー:以後FRと略す)に焦点を当て,研究を行った. 歩行中のFR機能に制限を加えるために,大きさの異なる6種類のアルミ製の足底板を作製し,Y字型足首ベルトおよび2本の足部固定用ベルトを用いて,足底部に固定し,裸足歩行と比較する実験,ならびに専用靴の内底に足底板を敷いて,制限のない場合と比較する実験を行なった,対象は,22名の男女(年齢19-22歳)で,3次元動作解析装置,4枚の床反力計,筋電計,足圧計,加速度計を使用し,各条件下における歩行動作の運動学・運動力学的分析を行なった. 右足に足底板を装着した歩行では,裸足歩行と比較し,歩行速度の減少,歩行率の減少,右の片脚支持期間の短縮とその後の両脚支持期間(%時間)の有意な増加がみられた.下肢の関節角度に関しては,立脚後期における右足底屈角度の減少と右足背屈角度の増大,右膝関節伸展の増加がみられた.重心移動では,前後の重心移動幅(平均歩行速度に対する重心の前後移動)が有意に増加した.水平面上に投影した重心の軌跡をみると,右側が前方に変位した非対称な8の字型波形を示した.床反力では,歩行速度の低下に伴い前後,上下方向のピーク値の減少がみられたが,特に左脚接地時の垂直床反力の減少,および右足による駆動力の減少が顕著であった.また,立脚後期の右足関節によるパワー産出の顕著な低下が認められた. これらの結果は,右足のFRが制限されることにより,左下肢の振り出しや左前方への円滑な重心移動が妨げられ,歩行速度の低下や非対称な重心移動を生じたと考えられた.立脚後期の足関節背屈や膝伸展の増加は左下肢の歩幅の確保に必要な代償運動と考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた実験は計画通り終了した.多種の機器を使用し,多くのパラメータに関する測定を行ったため,データ量が膨大で,まだ全ての解析が終了したわけではない.また,解析用の市販のソフトがないため,それぞれの測定項目に関して,目的に応じたワークシートを開発しながら分析に当たっている.平成25年度までは試行錯誤の状態で,開発に多大な時間を要したが,かなり充実したプログラムが完成したので,今後の実験に利用できると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに収集したデータの解析作業を進めるとともに,当初の予定である,複数のロッカー機構の制限時における,①エネルギー交換に及ぼす影響,②衝撃吸収に及ぼす影響,③駆動(Push-off)に及ぼす影響,④重心移動の抑制に及ぼす影響,⑤代償作用について検討を加えたい.但し,立脚初期の衝撃吸収に関する平成24年度のデータが不足していると考えられるので,ヒールロッカーに関する実験を追加する.また,可能であれば,本研究に関連して,市販されているロッカーソールの特徴についても生体力学的分析により,その有用性を検討したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は学内業務が多忙であったため,実験が集中して行えたのは学生の協力も得られる2月,3月の期間だった.しかし,その時期になると科研費での請求が困難となったため,報償費等を個人研究費から支出した. これまでの実験で得られたデータで,解析中のものが多く残存するため,解析のための報償費等に多くの支出が必要となる.また,実験のための消耗品(筋電電極およびマーカーを貼付するための両面テープなど)と学会参加のための費用に使用することを計画している.
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