本研究の目的は,歩行中の足部ロッカー機構の生体力学的な役割を明らかにするとともに,運動学,運動力学,筋電図学的特性に関する新たな知見を探ることである. 平成24年度は,ヒールロッカーとアンクルロッカーに関する検討を行った.その結果,ヒールロッカーに制限を加えた場合には,立脚期の同側膝屈曲角度の増加と対側足最大背屈モーメントの増加,底屈モーメントの減少などがみられ,対側下肢による代償が示唆された.アンクルロッカー制限時には,立脚期における同側膝関節屈曲角度および伸展モーメントの減少,膝屈筋群の筋活動の増大,立脚期の底屈モーメントの減少がみられたことから,アンクルロッカーが立脚期の膝の過度の伸展や重心の上昇を抑えている可能性が示唆された.平成25年度は,主にフォアフットロッカーに関する検討を行った.フォアフットロッカーが制限されることにより、対側下肢の振り出しや対側前方への円滑な重心移動が妨げられ、歩行速度の低下や非対称な重心移動を招くこと,また,足部によるPush-offが著減するが,同側股関節屈筋等による補償が生じる可能性が示唆された. 平成26年度は,ヒールロッカーとアンクルロッカーに関する実験の追加を行ない,衝撃吸収や重心移動への影響を検討した.衝撃吸収の指標として立脚初期(荷重応答期)における,踵,大腿骨外側上顆,第7頸椎の垂直方向加速度,同時期の床反力垂直成分ピーク値,膝関節屈曲角度を求めた.ヒールロッカー制限により,歩行速度が減少するにもかかわらず,踵と膝間での衝撃吸収率の減少がみられた.床反力垂直成分ピーク値に差はみられなかったが膝屈曲角度は増加傾向を示した.重心移動に関しては,ヒールロッカーおよびアンクルロッカーのどちらに制限を加えても,制限側立脚期における水平面上の重心動揺の減少や制限側Push-off 時におけるパワーの低下がみられた.
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