研究課題/領域番号 |
24500597
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
小川 豊太 (濱口 豊太) 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (80296186)
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研究分担者 |
田山 淳 長崎大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10468324)
冨家 直明 北海道医療大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50336286)
西郷 達雄 長崎大学, 学内共同利用施設等, その他 (50622255)
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キーワード | ストレス / 過敏性腸症候群 / 運動療法 |
研究概要 |
過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)は腹痛と便通異常を伴って有症状者の日常生活に障害をもたらす.心身症診断・治療ガイドライン2006では,IBSには薬物療法,食事指導,生活習慣改善指導が行われる.また,日常の運動はIBS症状に改善をもたらすことが示されつつある.本研究はこれまでに開発したIBS症状を減弱させる「腹部体幹ストレッチ法」「散歩」「運動と食行動の教育」をそれぞれ段階付けした8週間プログラムにより,IBS有症状者へ運動介入を開始した. 平成25年度はIBS有症状者20名(男性8名,女性12名,平均年齢21±1歳)を対象に,介入群と非介入群に無作為割付して運動介入を実施した.介入開始に先立ち,インフォームド・コンセントを行い,IBS検査,心理検査,基礎代謝量を測定する.運動実施の自己効力感高低別にクラス分けし,強化介入群と対照介入群を割り付けた. 強化介入群は,「教育・カウンセリング」から開始し,運動と食事行動の介入を実施してその経過を記録した.対照介入群には健康関連情報,食事情報,運動情報の提供を行う.記録は両群ともに専用の自己記入式手帳と携帯型行動計測装置を使用し毎日セルフモニタリングさせ,強化介入群には週1回の教育・カウンセリング,運動指導を行った.介入終了後,生活習慣改善度を分析し,病状,心理,生理検査の変化からリハビリテーション効果を解析した. 平成25年度計画では被験者30名を実施し,フォローアップ調査を予定した.全被験者予定者数は3年間でIBS患者60名(強化介入群30名,対照介入群30名)であり,平成26年度は残り10名の介入を予定している.平成25年3月までに実施した実験の成果は第20回日本行動医学会にて報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IBS有症状者enroll・検査・診断の実施(Step 1),IBS有症状者に対するリハビリテーション介入の実施(Step 2),データ解析と介入プログラムの改良,研究報告(Step 3)を予定し,平成25年度はStep 1ならびにStep 2を実施した.本研究の当初予定被験者数は60名であり,平成25年3月までに50名の被験者がenrollされ,実験が進んでいる. 介入は全8週間のプログラムとし,対象者は(1)IBS教育を受講した後,(2)運動の講習を受け,(3)消化管症状(GSRS)並びに心理ストレス検査,(4)生理検査,(5)8週間の運動介入,(6)介入後の検査を実施した.運動介入プログラムは,体操と歩行,ライフコーダGSを携帯させ,週に1度の活動調査と4週目に中間介入を行った.介入前後に腹部症状と心理状態,ストレス負荷時の心電図,唾液アミラーゼ,安静時代謝量を測定した. 研究分担者と連携研究者により作成したIBS教育プログラム,カウンセリング法を6時間以上講習した研究代表者と臨床心理士(2名)にて教育カウンセリングを行った.強化介入群には8週間のうち週1回の頻度で教育・カウンセリングを行い,運動処方(腹部運動,歩行)と好ましい食行動の遂行を促した. 対照介入群には一般的な健康関連情報を提供し,カウンセリングではセルフモニタリングの結果を示し,運動と食行動の強化介入プログラムは含めていない. 強化介入・対照介入の両群の被験者には携帯型行動計測装置(Kenz製LifeCorder GS, 設備備品費にて追加購入)を常時携帯させて活動量と日常生活の記録を行わせた.介入終了者には今後,介入終了後3ヶ月,6ヵ月,12ヵ月経過時点で郵送法による追跡調査を実施する予定である.データは平成26年10月までに取得終了し,その後,解析ならびに文書報告を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
介入期間はこれまで通り,週1回,2ヶ月(計8回)とし,被験者謝金費,消耗品費を使用する.研究分担者と連携研究者によりデータ解析のため,平成26年4月および10月に研究推進会議を開催する予定である. 1 平成26年度以降のデータ解析と介入プログラムの改良のため,(1)プログラム全体の効果:週1回,計8回試行(2ヶ月)の介入効果をGSRS,VASの結果を用いて強化群と対照群で比較する.また,介入前後の脳機能,生理指標を分析する.(2)健康行動の効果(短期効果):腹部体幹筋ストレッチ,腰部体操,歩行時の脳機能,基礎代謝量を含む生理指標を比較分析する.(3)介入後の複合効果(長期効果):介入終了後3ヶ月・6ヵ月・12ヵ月経過時点で被験者に対しIBS-QOL,GSRS,生活調査(郵送法)による追跡調査を行う.(4)運動実施に対する自己効力感(Marcus,1992.中山,2002)の高さによる介入効果の検証:IBS症状,生理指標,生活習慣の項目を自己効力感のクラスタ別に比較し,効果判定する. 2 IBS有症状者に対するリハビリテーション強化介入プログラムの改良のため.(1)仮説が支持された場合:自己効力感の高低別に段階付けした介入プロトコルを作成する.または,IBS症状別(下痢型,便秘型,混合型)により効果のある介入プロトコルを作成する.(2)仮説が支持されなかった場合:これまでの調査したデータを分析し,研究報告書,学術論文,研究発表を行う.なお,研究会議を定期開催し,研究活動を確実に推進する. 3 研究報告:論文,学会発表,介入プログラムの公表のために,(1)本研究結果は年度毎に研究報告書,学術論文,研究発表を行う.(2)「IBSの運動療法プログラム(仮称)」として印刷体または電子体書籍を作成し,報告する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は被験者謝金の配当が予定より少なかった点,データ解析およびデータ整理のための研究補助人件費を平成26年度へ繰り越した点,海外渡航費が予定より安価であった点で余剰資金があり,これを平成26年度に使用することとした. 平成25年度の余剰資金については,今年度の論文作成・校閲・投稿の費用,研究成果の発表旅費,研究報告書作成のための研究会議に補填して用いる.
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