研究概要 |
神経の生存や維持には,神経栄養因子が必要となるが老年期に至るとこれらの因子の生産能力が低下する。本年度の研究では,ラット腰髄における神経栄養因子とその受容体に対し,バランス運動介入の影響を検討することを目的とした。 Wistar系雄性ラット老齢群2年齢12匹,成体群10週齢10匹)を対象とし,バランス運動群と非運動群はランダムに分けた(老齢運動群6,老齢非運動群6匹, 成体運動群5匹,成体非運動群5匹)。運動群は,外乱刺激装置上で1日1時間,4週間運動を負荷した。すべてのラットにおいて,餌や給水は自由に摂取させた。実験終了後,脊髄(L3-5)を摘出し, total RNAを抽出した。逆転写反応により作成したcDNAを鋳型とし,リアルタイムPCR法(比較Ct法)にて発現量を検討した。ターゲット遺伝子はNGF-TrkA, BDNF-TrkB, NT3-TrkC, GDNF-RET, GFRα1,GFRα2の10遺伝子と内部標準遺伝子は,beta actinを用いた。NT3,GDNF TrkA,TrkC,RET mRNAの発現量は変化がなかったが,その他のターゲット遺伝子については,週齢により,その他の神経栄養因子と受容体については,運動を行う事により発現量が変化していた。週齢により,その他の神経栄養因子と受容体については,運動を行う事により発現量が変化していた。バランス運動により,選択的に神経栄養因子受容体mRNA発現がアップレギュレートされる結果となった。また走行運動時と同様に,老齢期と成体期では,運動により受容体mRNAの発現様式に違いがみられた。神経栄養因子が運動によって脊髄神経自体での発現が増加したことや,末梢器官で発現したその因子が脊髄内の血管や神経の逆行性輸送によって脊髄へ到達し,脊髄内のmRNA発現量が上昇したため脊髄神経が活性化されている事が示唆された。
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