研究実績の概要 |
老化により神経栄養因子の不活性化から神経機能の低下を引き起こす。適度な運動では、神経系内の栄養因子の放出が高まり、神経活動が活性化される。本年度は、老化により低下した神経機能を活性化することが可能であるか、10週齢、6ヶ月齢、1年齢、2年齢のWistar系雄性ラットに対し、トレッドミル走行運動の影響を検証した。対象動物は、5.8m/minにて、計60分を1日1回、週5回、4週間実施した。同過程での腰髄脊髄神経における神経栄養因子発現と他の神経形成関連因子、神経ペプチド、アポトーシス関連因子、神経突起伸長関連分子発現動態に関し、各週齢の非走行運動に対する走行群に上記関連遺伝子発現についてPCR array法(84遺伝子)により検出した。非走行群に対して2倍以上の遺伝子発現が検出された項目について結果は、10週齢では、高発現遺伝子は、検出されなかったが、低発現遺伝子は、3遺伝子(細胞分化関連遺伝子)であった。6ヶ月齢では、高発現遺伝子は、検出されなかったが低発現遺伝子は、23遺伝子(神経栄養因子-受容体,神経新生、成長因子、アポトーシス関連因子であった。1年齢では、 高発現遺伝子は6遺伝子(神経栄養因子-受容体、神経ペプチド)、低発現遺伝子は、1遺伝子(アポトーシス)であった。2年齢は、 高発現遺伝子は26遺伝子(神経栄養因子-受容体、神経ペプチド、神経新生)、低発現遺伝子は、1遺伝子(アポトーシス)であった。運動による機能改善は、神経単独ではなく、神経活動を活性化させる関連因子について多面的な機能連関の中で考える必要があり、また週齢による遺伝子発現活性化の違いも明らかとなった。
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