研究課題/領域番号 |
24500600
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
菊地 尚久 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (90315789)
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キーワード | リハビリテーション / 脳外傷 / 社会復帰 / 多施設間研究 / データベース / 高次脳機能障害 / 維持期 / 地域生活 |
研究概要 |
本研究の目的はリハビリテーション医療を受けた脳外傷患者に対して,急性期・回復期に評価した脳外傷リハデータベースを発展させて、回復期以降の障害状況,生活状況を基に,在宅復帰後の障害状況,生活状況の変化および就労状況および地域での活動状況などの社会復帰状況に対する調査をリハ科医が常勤する全国の病院・施設でから得られたデータを用いて行い,急性期・回復期・維持期においてどのような内容のリハを,どれぐらいの量,どの程度の期間実施することがもっとも効果的であるかを分析し,脳外傷患者に対する全国のリハ医療の質を向上させることを目的としている. 急性期から回復期・維持期までの経過が観察できた連続症例に対するリハ介入の検討を行ない、その後の地域での生活状況および社会復帰状況に関しても調査した.調査したデータベース項目は身体機能(運動障害の種別では片麻痺・対麻痺・四肢麻痺・失調など)・高次脳機能(知的機能,見当識,記憶,認知,遂行機能,行動障害,感情障害など),・精神機能の状況とその変化,ADL(FIM総点数および各項目),入院期間,治療および訓練内容,訓練時間,訓練期間などとした.対象は今年度主に神奈川県内の症例に限り施行した. 身体機能に関しては運動障害がある症例では片麻痺,失調症状の症例が多かったが,回復期以降に大きな変化は認められなかった.高次脳機能に関しては記憶障害、遂行機能障害を呈する症例が多く,維持期以後も大きな改善は認められなかった.行動障害,感情障害も合併する症例は頻度的には少なかったが,家族関係,復職に問題があると思われ,これらのデータを調査項目に加える必要性が示唆された.入院期間はリハ専門病院へ転院した症例で150日以上が最も多く,急性期病院から直接退院した症例は,30日未満が最も多かった.退院後外来訓練を施行している症例は高次脳機能障害症例では30%以上であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,急性期から回復期・維持期までの経過が観察できた連続症例に対するリハビリテーション介入に関する検討を行ない、その後の地域での生活状況および社会復帰状況に関しても調査した. 対象に関しては今年度は主に神奈川県の症例を対象として行った. 調査したデータベース項目は身体機能(運動障害の種別では片麻痺・対麻痺・四肢麻痺・失調など)・高次脳機能(知的機能,見当識,記憶,認知,遂行機能,行動障害,感情障害など),・精神機能の状況とその変化,ADL(FIM総点数および各項目),入院期間,治療および訓練内容,訓練時間,訓練期間などとした. 上記調査で得られたデータを統計ソフトを用いて解析し、結果を分析した. 今年度の結果は,身体機能に関しては,運動障害がある症例では片麻痺,失調症状の症例が多かったが,回復期以降のデータでは急性期に得られたデータと比較して,有意な変化は認められなかった.高次脳機能障害に関しては頻度では記憶障害が最も多く、次いで遂行機能障害、認知障害の順であった.急性期・回復期・維持期の比較では,回復期以降にも高次脳機能障害が残存する症例が多く,維持期以後もほとんどの症例では改善を認めなかった.また行動障害,感情障害の症例は頻度は少なかったが,連続症例検討で家族関係,復職に問題があると思われる症例が多く,これに関するデータを調査項目に加える必要があった.入院期間はリハ専門病院へ転院した症例では150日以上が最も多く,一般病院へ転院した症例では100日未満,急性期病院から直接退院した症例は,30日未満が最も多かった.退院後外来訓練を施行している症例は高次脳機能障害症例では30%以上であった。 上記の研究を施行し、ほぼ予測通りの結果が得られたため、今年度はおおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度にあたり,不足している項目に対しては,当初の計画に合わせるように進めていく予定である。 次年度は在宅復帰後の障害状況,生活状況の変化および就労状況,地域活動などの社旗復帰状況に対する調査を行う.調査項目は急性期病院または回復期病院退院時の身体機能(運動障害の種別では片麻痺・対麻痺・四肢麻痺・失調など)・高次脳機能(知的機能,見当識,記憶,認知,遂行機能,行動障害,感情障害など),・精神機能,ADL(FIM総点数および各項目)と退院後6か月以上経過した時点でのこれらの項目の変化,就労状況(未就労、福祉的就労,障害者雇用での一般就労,通常の一般就労)とその継続状況,地域での活動状況(訪問リハ・看護・介護の利用,デイケア・デイサービスへの通所,スポーツ活動、文化的活動など)に関する調査を行う。対象は急性期病院,リハ専門病院,回復期リハ病院などで登録施設におけるリハ科医のデータベースの登録が可能であり,自宅退院した症例のうち,その後6か月以上外来フォローが可能であった症例とする.対象となる病院・施設は現在登録されている急性期・回復期を中心とした施設と協力が得られた各都道府県・政令指定都市レベルのリハセンターである., また高次脳機能障害に関しては行動障害,感情障害の症例において,連続症例検討で家族関係,地域活動,復職・再就労などの社会復帰に問題があると思われる症例が多かったため,行動障害・感情障害とこれらの項目との関係に関して検討を行う予定である。 今回の結果に関しては日本リハビリテーション医学会学術集会などのリハ関連学会で報告するほか,リハ関連の学術雑誌にも投稿して,報告を行う予定としている.
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