本研究の目的はリハ医療を受けた脳外傷患者に対して,急性期・回復期に評価した脳外傷リハデータベースを発展させて、回復期以降の障害状況,生活状況を基に,在宅復帰後の障害状況,生活状況の変化および就労状況および地域での活動状況などの社会復帰状況に対する調査を行い,脳外傷患者に対する全国のリハ医療の質を向上させることを目的としている。 最終年度は平成25年度に施行した急性期から回復期・維持期までの経過が観察できた連続症例に関する症例不足分を補うために追加15例の症例検討を行った。結果は昨年度同様身体機能には回復期以降有意な変化は認めず、記憶障害などの高次脳機能障害の残存が多く、回復期まで障害が残存している場合には維持期以後の改善症例は少なかった。 次に在宅復帰後の社会状況、生活状況の変化および就労状況、地域活動などの社会復帰状況に関する調査を施行した。調査項目は身体機能、高次脳機能、精神機能、ADL、入院期間、治療および訓練内容、訓練時間、訓練期間と就労状況、地域での活動状況(訪問リハビリテーション、看護・介護の利用、デイケア・デイサービスへの通所、スポーツ活動、文化的活動)である。対象は神奈川県内の急性期病院、リハ専門病院、回復期リハ病院でデータベースの登録が可能であった28名とした。就労状況に関しては対象者の高次脳機能障害が重度であったこともあり、約45%が未就労、約35%が福祉的就労で、一般就労は約20%に留まった。訪問リハビリテーションは利用はやく20%、訪問看護利用は15%であったが、デイケア・デイサービス利用は3%であった。何らかのスポーツ活動は15%、文化的活動は20%であった。 本研究の最終年度の総括としては、脳外傷者の高次脳機能障害に対する職場、地域での理解が不十分であり、リハ関係者からの支援がさらに必要なことが明らかとなった。
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