研究課題/領域番号 |
24500603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
青木 秀哲 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50298824)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリオ生ワクチン / 野生株ポリオ / ワクチン由来ポリオ / 動作解析 / 下肢装具 / ポリオ不活化ワクチン |
研究概要 |
わが国では、1940年代後半から1960年代初頭にかけポリオの流行があり、多い年(1960年)では、5606人もの罹患者がみられた。ポリオウイルスは経口感染し、腸管から体内に侵入し、中枢神経系、特に脊髄の前角細胞を冒し、四肢・体幹に非対称の運動麻痺を生じる。特にその麻痺は下肢に多く発症する。また、麻痺は発症直後がもっとも重篤で徐々に回復し、ある程度まで治癒する。その後、数十年安定した時期が続く。長年、医学会ではポリオの麻痺症状は固定して、不変であると考えられていたが、1980年代から患者が罹患後30~40年経て、中年期になり、易疲労性、筋力低下、痛みなどの新たな症状が出現してきたのが問題となり、それがポストポリオ症候群(Post-polio Syndrome:以下、PPSと記す)と呼ばれるようになった。 本邦においては1964年よりポリオ経口生ワクチンの定期接種が始まり、野生株によるポリオの発症は見られなくなったが、生ワクチンの副作用によってポリオに罹患する例が1年に3から4例見られる。ポリオ患者の研究を進めていく上でワクチンによって罹患したポリオ患者の方がPPS出現年齢の早い事、また、圧倒的に男性に多く出現する事を経験した。われわれが渉猟した限り、これらの事項に関しての検討は行われていない。今回、野生株および生ワクチン由来のポリオ患者について5年間の追跡調査を行い、両者の違いを明確にし、経験上感じているワクチン由来ポリオ患者の方がより重度で早期にPPS症状が出現する事について検討を行っていく予定である。 今年度は、生ワクチン由来のポリオ患者9名と野生株によるポリオ患者2名の動作解析を行った。これらの被験者については5年の、来年度に新たに参加予定である生ワクチン由来のポリオ患者2名と野生株によるポリオ患者8名については4年の追跡調査を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付決定から、和歌山県立医科大学倫理委員会において承諾を受けるまでに時間を要したため、実験開始が遅れたため。 実際に、被験者を利用しての検討を行う以前の基礎的な検討(計測ポイントの検討、歩行距離の検討、撮影角度の検討等)に時間を要したため。 ワクチン由来ポリオ患者には年少者が多いうえ、全国各地の患者に実験参加を依頼したので、冬休み、春休み等の長期の休みを利用しないと実験が施行できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度と同様に和歌山県立医科大学げんき開発研究所において資料収集を行う。平成24年度はポリオ生ワクチン由来のポリオ患者のみが被験者であったが、今年度から野生株ポリオの患者についての検討を開始する。また、資料収集に並行して解析を行う。 野生株由来、生ワクチン由来のどちらのポリオ患者においても、新たに応募のあった者に対しては、平成24年度と同様の検査を行う。長期間の観察を必要とする検討であるため、新規の募集は25年度前半までとする。25年度に採用された者に対しての観察期間は4年となる。被験者に対しては毎年同じような時期に3次元歩行分析、筋肉・骨髄の脂肪変性についての計測を行う。 また、計測にあわせて国内外のポリオ関係の文献検索も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
和歌山県立医科大学げんき開発研究所に既存の3次元動作解析装置、床反力計の使用料、被験者への謝金、基礎実験を行うための試薬などの実験にかかる諸費用。 自宅からげんき開発研究所への交通費、日本リハビリテーション医学会への参加費、日本義肢装具学会において発表予定であるため、その交通費など。
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