研究課題/領域番号 |
24500603
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
青木 秀哲 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (50298824)
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キーワード | ポリオ生ワクチン / 野生株ポリオ / ワクチン由来ポリオ / 3次元動作解析 / 下肢装具 / ポリオ不活化ワクチン |
研究概要 |
わが国では、1940年代後半から1960年代初頭にかけポリオの流行があり、多い年(1960年)では、5606人もの罹患者がみられた。ポリオウイルスは経口感染し、腸管から体内に侵入し、中枢神経系、特に脊髄の前角細胞を冒し、四肢・体幹に非対称の運動麻痺を生じる。特にその麻痺は下肢に多く発症する。また、麻痺は発症直後がもっとも重篤で徐々に回復し、ある程度まで治癒する。その後、数十年安定した時期が続く。長年、医学会ではポリオの麻痺症状は固定して、不変であると考えられていたが、1980年代から患者が罹患後30~40年経て、中年期になり、易疲労性、筋力低下、痛みなどの新たな症状が出現してきたのが問題となり、それがポストポリオ症候群(Post-polio Syndrome:以下、PPSと記す)と呼ばれるようになった。 本邦においては1964年よりポリオ経口生ワクチンの定期接種が始まり、野生株によるポリオの発症は見られなくなったが、生ワクチンの副作用によってポリオに罹患する例が1年に3から4例見られる。ポリオ患者の研究を進めていく上でワクチンによって罹患したポリオ患者の方がPPS出現年齢の早い事、また、圧倒的に男性に多く出現する事を経験した。われわれが渉猟した限り、これらの事項に関しての検討は行われていない。今回、野生株および生ワクチン由来のポリオ患者について5年間の追跡調査を行い、両者の違いを明確にし、経験上感じているワクチン由来ポリオ患者の方がより重度で早期にPPS症状が出現する事について検討を行っていく予定である。 今年度は、生ワクチン由来ポリオ患者9名、野生株によるポリオ患者5名について3次元動作解析等の計測・解析を継続しておこなう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度、25年度におこなうべき計測は完了しており、中間報告を第29回義肢装具学会学術大会(佐賀市)において報告をおこなった。過去2年間のデータを解析し、本年6月に名古屋で開催される日本リハビリテーション医学会学術集会において中間発表をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、昨年までと同様、和歌山県立医科大学げんき開発研究所において、被験者の3次元歩行解析の資料収集をおこなう。新たな被験者は募集せず、昨年までの参加者のみの計測をおこなう。これは、新規の参加者を受け付けても経年的な調査が3年しかできないことによる。現状、2年分の資料が蓄積されたので、データの比較によってワクチン由来ポリオ、野生株ポリオ群の間に差異がないか比較検討をおこなう。また、検査に了承の得られた被験者に対しては筋肉・骨髄の脂肪変性の計測をおこなう。 また、計測と並行して国内外のポリオ関係の文献検索もおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度、謝金の支払いに不足が生じたため前倒し支給を受けた。前倒し支給額が必要経費より多かったため次年度使用額が生じた。 平成24,25年度の結果を本年開催される日本リハビリテーション医学会(名古屋)にて発表予定である。また、今年度も3次元動作解析装置、床反力計、体組成測定装置を使用しての資料収集をおこなう。
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