ポリオウイルスは経口感染し、腸管から体内に侵入し、中枢神経系、特に脊髄の前角細胞を冒し、四肢・体幹に非対称の運動麻痺を生じる。特にその麻痺は下肢に多く発症する。また、麻痺は発症直後がもっとも重篤で徐々に回復し、ある程度まで治癒する。その後、数十年安定した時期が続く。長年、医学会ではポリオの麻痺症状は固定して、不変であると考えられていたが、1980年代から患者が罹患後30~40年経て、中年期になり、易疲労性、筋力低下、痛みなどの新たな症状が出現してきたのが問題となり、それがポストポリオ症候群(以下、PPS)と呼ばれるようになった。本邦においては1964年よりポリオ経口生ワクチンの定期接種が始まり、野生株によるポリオの発症はみられなくなったが、不活化ワクチンが認可された2011年までは、生ワクチンによる副作用によってポリオに罹患する例が1年に3~4例みられた。ポリオ患者の研究を進めていくうえでワクチンによって罹患したポリオ患者の方がPPS出現の早いこと、また、圧倒的に男性に多く出現することを経験した。そこで、野生株および生ワクチン由来のポリオ患者について6年間の追跡調査を行い、両者の違いを明らかにし、経験上感じているワクチン由来ポリオ患者の方がより重度で早期にPPS症状が出現することについての検討を行った。PPSの概念が比較的新しいためワクチン由来ポリオではPPSの診断が早い時期についたが、野生株ではPPSの概念が定着したときにはすでに中高年になっていたため診断が遅れたのではないかとも考えられた。ワクチン由来ポリオ患者にPPSの発症を遅らせるためにはどのような装具療法をおこなえばいいかを三次元動作解析を用いて検討をおこなった。男性に多く出現することに関しては引き続き検討をおこなっていく予定である。
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