先に我々は,一日12時間の関節運動でも関節拘縮発生を予防することができなかったことを報告した。そこで本研究では,一日12時間以上の関節運動が関節拘縮の発生予防に与える影響を検討した。対象とする実験動物として8週齢,体重192~250gのWistar系雌ラットを用いた。実験期間は1週間とした。ラットは右足関節最大底屈位固定時間の違いにより,1週間連続固定するGroup 1,1日12時間固定した後に固定を除去し12時間自由に飼育するGroup 2,1日8時間固定した後に固定を除去し16時間自由に飼育するGroup 3,1日4時間固定した後に固定を除去し20時間自由に飼育するGroup 4に分けた。Group 2~4においては,実験2日目からも固定と固定の除去を初日と同様のスケジュールで実施し,これを7日目まで続けた。実験最終日に,麻酔下に,Group 1~4の右足関節の背屈角度を測定した。その結果,初日にはGroup 間には有意差を認めず,7日目にはGroup 間に有意差を認めた。また,Group 1,Group 2,Group 3の初日と7日目の間には有意差を認め,Group 4の初日と7日目の間には有意差を認めなかった。これらのことから,初日の背屈角度はGroupによる違いは認められない事,およびGroup 4には関節拘縮が発生しなかった事が明らかとなった。今回我々は,4時間の関節固定すなわち20時間の関節運動は関節拘縮発生を予防できることを示した。健常成人では睡眠時でも数分から1時間程度の間隔で体動body movementがある。実際に健常成人の足関節底背屈状況を電気角度計を用いて連続24時間観察した結果では,睡眠時の底背屈運動は少なくなるものの消失しない。これらのことから,関節は常に動くことにより柔軟性を保っていると推測できる。
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