平成27年度は、研究計画通り、成人知的障害者および発達期の小児を対象に研究を行った。 成人知的障害者2名の捕食動態を解析した研究では、症例ごとにそれぞれに異なった結果が得られた。症例1では、ペーストととろみでは、口唇圧に有意差が認められ、口唇圧を変化させて対応していることが示唆された。一方、症例2では、下唇接触積分値に有意差が認められ、捕食時の下唇によるスプーンの安定性を変化させて対応していることが示唆された。成人知的障害者と健常成人との比較では、症例1症例2ともに、ペーストととろみで下唇接触の持続時間や積分値が変化しており、口唇圧そのものの変化に加えて、上肢操作により口唇との接触方法に変化があることが示唆された。合わせて、本研究の対象2例においては、捕食する食品が変化した場合、健常成人のようにある一定パターンで捕食動態を変化させるのではなく、食品が変化した際の捕食動態の変化には個人差があることが示された。 また、発達期の小児(2歳児5名)を対象とした研究では、口唇圧積分値を比較したところ、ペーストでは5つ、とろみでは6つにおいて、健常成人の値が有意に高かった。また、ペースト捕食時の曲げ積分値はより小児が、とろみ捕食時の下唇接触積分値ではより健常成人が有意に高かった。このことから、全般的に健常成人は口唇圧が高いことが示されたが、流動性が高いとろみでは、健常成人は下唇にてスプーンを安定させて捕食を行う傾向が示され、また、小児では、付着性の高いペーストは、上唇にスプーンを押しつけて捕食する傾向が示唆された。
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