本年度の研究目的B及び実施計画は、障害を負ってからの新しい趣味、楽しみの一環として、生涯の支えになるような活動の模索をすること、他患者とのセッション、バンドグループの結成を打診し、集団音楽活動を促し、発表の機会を与え、音楽療法が患者に社会性の獲得までももたらすかを検討することであった。そこで今回は、【対象】在宅生活期脳卒中片麻痺患者8例、平均年齢56.5±6.2歳を対象とし、【方法】電子ギター・電子ドラム・、電子ピアノを患者宅に貸出し、8週間自宅での個別練習と、週一回外来で合奏指導を行った。先行研究で対象者は演奏訓練を行っており楽器の扱いには習熟している。役割分担、コンサートの準備活動等をなるべく自主性に任せつつサポートした。演奏曲・ボーカル・担当楽器の選定やバンド名、衣装、曲順など患者相互の話し合いで決定した。個別アンケート、協同作業評価尺度、精神ストレスはPHRF-SCLで評価した。【結果】協同作業評価尺度では、協同効用因子・個人志向因子・互恵懸念因子ともに訓練前後で有意差はなかった。PHRF-SCLは平均18.6から訓練後平均11.8に減少(P<0.05)した。【考察】成果発表を前提とした集団訓練の効果として、メンバーの共同作業に対する意識変化を期待したが有意差はなかった。しかし共同作業により精神ストレスは軽減し、音楽を通じそれぞれの役割を果たしつつ積極的に人前に出ていく準備が行われた。アンケートでは大きな満足感と自信が得られたことから、社会性の獲得にも貢献したと考える。人前での成果発表を目標とした脳卒中の訓練活動は新しい試みであり、その有用性にも期待が持てる。
|