研究課題/領域番号 |
24500611
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
泉崎 雅彦 昭和大学, 医学部, 教授 (20398697)
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キーワード | 呼吸リハビリテーション |
研究概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)において、生活の質を低下させる最大の要因は呼吸困難である。しかし、その治療手段は限られ、新たな対策が求められている。本研究の目的は、呼吸困難感の情動面にアプローチする呼吸リハビリテーションの臨床展開に向け、呼吸生理学的、神経生理学的方法を用いて、このアプローチに関する基礎的な学術的背景を得ることである。運動負荷時における呼吸リズムの増加が呼吸困難感の変化と関連に関する検討では、被験者を追加し、健常成人男性27名で検討した。自転車エルゴメータを用いて漸増運動負荷試験を行った。呼吸困難感閾値と呼吸数閾値の間に有意な正の相関を認めた(r=0.75、 P<0.001)。さらに呼吸困難感閾値と呼吸数閾値の級内相関係数(ICC=0.71、 P<0.001)とBland-Altman plotによる解析から、呼吸困難感閾値と呼吸数閾値に高い一致性が示され、呼吸の客観的指標と主観的指標のリンクが明らかとなった。さらに今回は健常成人男性5名にて再呼吸法を用いて吸入気CO2濃度を上昇させ呼吸負荷を行って呼吸困難を誘発し、そのときの脳内活動部位を調べた。CO2負荷中に脳波の同時測定を行い、呼吸の吸息に同期した脳内活動を双極子追跡法にて推定した。その結果、Cingulate cortex、Frontal cortexに活動が見られ、これらは随意呼吸に関係した部位でもあるので息を吸いたいという欲求から活動しているとも考えられる。またInsulaにも活動が見られ、Cingulate cortex、Frontal cortexはInsulaとともに不快情動と関連があるといわれる領域である。Cingulate cortexは痛み感覚にも反応するという報告もある。概して、次の吸息への期待感=随意呼吸と吸息に伴う不快感が同時に観察された。以前CO2負荷中における呼吸困難感閾値と呼吸数閾値の一致性を報告したが、呼吸数増加のメカニズムに呼吸困難感による不快情動の活動の高まりが寄与する可能性を示すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「漸増運動負荷において、呼吸困難が、情動変化を介して、呼吸リズムを促進させるかを明らかにする」に取り組んできた。今回呼吸困難感閾値と呼吸数閾値の一致性が示され、呼吸困難が呼吸リズムを促進させることを示唆する所見である。さらにCO2負荷中の脳波解析では情動領域の活動が高まることが示された。今後は情動領域活動のタイミングと呼吸数増加のタイミングについての関連について明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
「漸増運動負荷において、呼吸困難が、情動変化を介して、呼吸リズムを促進させるかを明らかにする」に関しては脳波解析が達成されておらず、今年度はこれについて検討する。「CO2ガス吸入負荷において、呼吸困難が、情動変化を介して、呼吸リズムを促進させるかを明らかにする」という課題については、前年に脳波解析によってCingulate cortex、Frontal cortex、Insulaの活動が高まることが明らかになったが、時間的変化とどのような呼吸困難のタイプに相当(例えば、air hunger、expectation to the next inspirationなど)するのかを調べていく。呼吸困難のカテゴリーをわけて(例えば、air hunger、expectation to the next inspirationなど)、スコア化することを考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として外国旅費が発生しなかったために当該研究費が生じました。 当該研究費については、平成26年度に請求する研究費と合わせて、平成26年度に主に脳波測定実験器具および呼吸生理実験器具の購入に使用します。
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