研究課題/領域番号 |
24500612
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
矢澤 格 昭和大学, 歯学部, 講師 (40360656)
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キーワード | 呼吸・循環 / 上肢の交互運動 / 相補的機能的相互作用 / 自律機能 |
研究概要 |
本研究は、“呼吸/循環、歩行の間で起こる相補的、かつ機能的相互作用”の自律的メカニズムの解析を行うために企画された。昨年度は、標本を“Hyperoxia/Normocapnea”に曝すことにより上肢の交互運動のリズムを産生するCentral Pattern Generator (CPG)を活性化して歩行様活動が産生し、末梢化学的受容器からの求心性入力量を減らしたり、入力変化量を大きくすることで呼吸と歩行のリズムは1:2と1:3、あるいは1:1になることを明らかにした。 今年度は、歩行様活動を産生する頸髄は脊髄上向路を介し脳幹に影響を及ぼすのかを調べるために、開口運動、吸気を新指標として加え、細胞外記録を行った。歩行が誘発されない呼吸状態では開口運動は吸気相と同期して起こり、歩行が誘発される呼吸状態では口呼吸に変わった。開口運動の吸気~呼気相へのシフトは、化学的受容器からの求心性入力量を増やすと起こった。そこで、活性化した頸髄から脳幹への影響を遮断するために脳幹と脊髄の移行部で切断すると、呼気吸気相で産生されていた開口運動は吸気相のみで起こった。さらに、運動時、自律的に血圧上昇が起こることが分った。動物は生後24日齢以下のラットを用い、標本を作成した。横隔神経活動(第4頸髄由来)は「呼吸活動( 主に吸気)」、左右筋皮神経活動(第5~8頸髄由来)は「上肢の左右交互運動」、顎二腹筋を支配する三叉神経活動は「開口運動」、舌下神経活動は「吸気あるいは舌運動」、上頸神経節からの神経活動は「交感神経トーヌス」の指標とした。 上記の結果から歩行・運動時の呼吸数上昇、昇圧、口呼吸は、酸素を効率よく肺に取り込み、全身に酸素を素早く行き渡らせようと中枢神経系内の経路を介して自律的に引き起こされる可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
理由は、異動に伴い新規実験系の立ち上げ、部下や大学院生への標本作成の指導により、(1)除皮質還流標本に薬剤(NMDA + Serotonin + NoradrenalineあるいはDopamine)を投与することにより、呼吸が止まることなく左右上肢の交互運動を誘発できる薬剤の至適濃度の検討は行われていない 。(2)2年目に予定されていた光学計測法を用いた脳幹や脊髄の神経活動の機能マップの作成が行われていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、これまでの成果をまとめて論文を作成する。それに並行し、呼吸/循環中枢、三叉神経系を含む脳幹と脊髄との間の相補的で機能的な相互作用を光学的計測法により可視化することが中心となる。また、標本の還流液に人工血液を導入し、光学計測を行うことを計画している。
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